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89.灰かぶり姫3
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アンサンブルの一団が入ってひと段落すると、17時を回り、有田と圭一郎が姿を現した。
今年は合唱団がいないから、これで全員集合と言うことになる。
水野谷はさっそく、有田とギャラの話。
圭一郎は星野と最近の音楽界事情についての情報交換中だ。
吉田や三浦は緊張しているようで、さっきから何度もトイレに行っている。
そういう蒼だってそわそわだ。
18時になったら練習が始まる。
仕事どころではない。
「こんばんは!」
ざわついている事務室に姿を現したのは神崎である。
「元気?久しぶりね」
蒼を見つけて寄って来る彼女。
「先生」
「いやねえ。先生だなんて。シンデレラやるんだって?楽しみにしているよ。王子様は誰なの?」
「あ、おれですけど」
圭一郎との話を中断し、星野が手を上げる。
「え~!星野くんなの?なんだかがっかりね」
「どういう意味です?酷いなー」
星野は苦笑いだ。
「神崎くん。久しぶり」
「あら!関口先生!!」
神崎は嬉しそうだ。
「キミは変わらないね~」
「そんなことないですよ」
「いや。姿形も変わらないが、曲もそうだね。奇想天外でわくわくする展開だ」
「ありがとうございます」
神崎の意識が圭一郎に移ってほっとする。
彼女は苦手だ。
去年、いじめられたことを思い出す。
今年は大丈夫だろうか?
そんな不安を察知したのか。
星野が笑う。
「今年のターゲットはおれかもしれねーな」
そうこうしている内に、柴田や横川が顔を出す。
そして、黒田や佐伯たち。
星音堂事務室はごちゃごちゃになってきた。
楽譜を眺めていたいのに……。
三浦はお茶出しでてんてこ舞いだ。
これは星音堂だけの騒ぎではないらしい。
のんきにしていた尾形もお腹の調子でも悪いのか。
今日はお菓子に手をつけない。
みんながみんな、それぞれの思いを抱えてリハーサル第一回目が始まった。
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