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111.父と息子7
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「そ、それはどうか……」
いろいろ調べていて知っている癖に!
どうしてそういうことを聞くのだろう。
蒼は膨れて章を見る。
「どうせ、知っているんですよね?おれたちのこと。いろいろと」
「そんなに知らないよ。プライベートな話だもの。現在進行形の部分は知っているけど。昔のことを調査しても、どこにも証拠はないしね」
それはそうだ。
「だから。聞いてみたかった。蒼の口から。関口くんとのことをいろいろとね」
「……いまさら、聞いたってどうしようもないですよ」
「そういわないで。それで?一緒に住んでから、いつ思いを打ち明けられたの?」
「!!」
蒼は顔が真っ赤だ。
「そ、そんなことまで聞くんですか!?」
「いいじゃない。親だもの」
「お、おれは、親だなんて思えません!!」
「まあ、急に出てきて父親面してもダメだとは思っているけど。父親面したいんだよねえ。おれは」
「……」
章はうまい。
結局、蒼はポツンポツンと彼の質問に答えてしまう。
「でも、蒼は関口くんが本当に大切なんだね」
「……。大切、です。なんだか、心のなにかが奪われてしまったというか。なにをしていても、心が満たされないというか。星音堂にいたとき。大したことはできていなかったと思います。でも、本当に素敵な毎日に満ち満ちていました。すみません。こんなことを社長に話すなんて失礼なことは分かっていますけど」
正直な気持ち。
「いいんだよ。その素敵な日々を奪ってしまった張本人だが……。私は君の気持ちを確かめたかったんだ。今回はそういう目的もあってここまで来た」
「……」
章はあらかた食事を終えると、箸を置いて、蒼を見た。
「蒼。君にはいろいろな選択肢がある。考え方によったら、この羽根田のこの部門を続けてもらうことで、ある程度の地位に君が行けるようになることは明白の事実だ。だけど、もう一つは、元の生活に戻りたいと思う気持ちを実行できるかどうかということだ」
「元の……」
「そう。元の」
「元になんか戻れませんよ。おれは市役所を退職してきた身です。元に戻ってもできる仕事なんかありませんし。おれの居場所なんか。もうどこにもありません」
「じゃあ、このままここでできることを精いっぱいやれるかい?」
「おれは、自分で選んでここにいるんです。確かに、いろいろな交換条件がありました。だけど、選んだのはおれですから」
逃げてしまいたい気持ちがあるのは間違いない。
だけど、放り投げてもいけない。
それが蒼なんだから。
羽根田は苦笑する。
空にそっくりなんだよね。
この子は。
自分の血なんか、一滴も入っていないのではないのか?と疑うくらい。
彼は瞳を細めて口を開く。
「では、社長命令で。君に一つ。頼みたいことがあるんだが……」
それから蒼は、章の話す仕事の内容に耳を傾けた。
自分は羽根田のために尽くすしかない。
やるからにはやらないと……。
新しい仕事は蒼にとってどんな出来事を運んでくれるのだろうか?
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