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113.変革のとき7
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「でも、それっておれの中の問題で。星音堂にいたら当たり前のことばっかりで。……それが、今度は本庁に戻れる。そう聞いたときに、決めました。おれの感じたこと。本庁でも試してみたいって。正しいことだって思えるから。前に本庁にいたときよりは、ちょっとはましな公務員になれるんじゃないかって。だから、早く本庁に戻ってみたいんです」
三浦の話に、星野は吹き出す。
「ぶぶーッ」
「なんで笑うんですか!」
「バカか。お前。くそ真面目すぎるっつーの」
「星野さん、失礼でしょう?」
油井が口をはさむ。
だけど、星野はやめない。
「そんなくそ真面目で本庁に戻ったら、すぐに潰れるぞ」
「でも、やってみたいんです」
「バカ野郎……。本当に死んでもなおらねーな」
そうは言っても、星野はにこにこだ。
嬉しくて仕方がないくせに。
口が悪いんだから。
篠崎もそう思う。
「それに。星音堂には篠崎が残るし。安心です。こいつなら」
急に自分に振られて、彼はわたわたとスプーンを落とす。
「わわ!おれなんて。三浦さん」
「大丈夫。篠崎なら。大丈夫だ。おれもついているし!」
「随分、大きく出たなー。三浦」
星野は油井と顔を見合わせて笑う。
言われた篠崎は目を白黒だ。
この二人。
あんまり進展はないけど、結構、一緒にいる。
三浦の気持ちは未だ決着がついていないけど、心の中は決まっている。
篠崎はなんだか嬉しい気持ちになったが、気恥ずかしいと思い、星野に話題を振った。
「そういう星野さんはどうするんです?」
「おれ?おれは残るに決まってんじゃん」
「悩まないんですか?」
三浦は苦笑する。
「あったりまえだ。自由気ままだからやってるもんで。市役所職員なんて窮屈なところにおしこめられたらたまらないね。仕事して、好きなことできればなんだっていいんだよ。おれは」
「仕事は二の次でしょう?」
油井の突っ込みに、一同は笑う。
「でも、民間になったら厳しくなるかもしれませんよ?」
三浦は心配だ。
だけど、彼は手をひらひらさせて余裕だ。
「だってよ。頑張れって言われたって、どこ頑張るんだよ?星音堂は営業をして客を取るわけでもないし。今まで通りのことくらいしかできねーって」
「それはそうだけど」
「なんとかなるって。おれの趣味は仕事じゃねーからな」
星野らしい。
油井は吹き出す。
「いいの?油井くんは?」
三浦の問いに、油井は笑って頷く。
「おれはなんでも。星野さんがここにいてくれれば。市役所職員でも、パートでもなんでもいいです」
「愛だねー……」
三浦の茶々に、一同は笑った。
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