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113.変革のとき11
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2月。
雪が多い。
今日も、朝から雪続き。
道路状況も悪い。
一同は、14時10分くらいに本庁に到着した。
しょっぱなから遅刻は悪い印象を与えてしまう。
お互いに顔を見合わせて緊張していた。
水野谷に案内されて、用意された会場へ向かう。
「まあ、緊張せずに楽にしなさい」
彼はそういうけど、そういうわけにはいかないだろう。
「課長、そんなことできるわけないじゃないですか」
高田はカチカチだ。
民間企業の人と会うなんてなんだか世界が違いすぎるし。
それに、自分たちの雇用主になる人だろう?
自分たちは、残るという選択をしてよかったのだろうか?
「失礼します。なんだか雪で遅れてしまいまして」
水野谷は、なんのためらいもなく会議室に顔を出す。
「構いません。こちらも若干遅刻です」
中からの声。
あれ?
星野は聞き覚えのある声に目を瞬かせる。
どこで?
「入れ」
水野谷に促されて、中に入る。
一同は、はっとして足を止めた。
中には二人の男。
一人は羽根田章。
もう一人は、確か。
彼の秘書だった。
「お久しぶりだね。みなさん」
「え?」
「課長。……あの」
一同が面食らっていると、水野谷は笑う。
「今度、星音堂の移譲に協力してくださった羽根田重工社長の羽根田さんだ」
「え?じゃあ……」
「星音堂って、羽根田重工の傘下になるってことですか?」
尾形や氏家も目をぱちくり。
「星音堂という施設は大変魅力的でね。地元ということもあるし。なにせ、人を引き付ける魅力がある。とっても気に入ってしまって。移譲先を公募していると聞いて、いち早く名乗りを上げてしまったよ」
章は優しく微笑む。
羽根田重工なら安泰に決まっている。
世界的にも有名だし。
ちょっとやそっとでは倒産する恐れもない。
一同はほっとして顔を見合わせた。
ただ、星野は面白くない。
蒼を奪っておいて、今さらいい人面されても。
虫のいい話だ。
償いのつもりなのだろうか。
星野の視線に気づいて、章は苦笑する。
「そんな怖い顔をしないでくれる?星野くん」
「でも。おれは羽根田のやり方があんまり好きではありません」
「星野」
氏家たちはびっくりして止めようとするが、彼はむっとしたまま章を見ていた。
「羽根田だったら辞退したい。そう言うのかな?」
章の言葉に、星野はむっとする。
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