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嶋は子供のようにわんわん泣く。すると、紫がくるりと正面を向いて…大きく両腕を広げてみせた。恐る恐る嶋が彼の薄い胸に身を寄せると、Ωの細い腕がふわりと頭を抱いた。
Ωの静かな心遣いが嬉しくて、自分の不甲斐なさが悲しくて嶋は再び泣き出してしまう。
『ごめん、紫。本当にごめん。オレが…オレが全部悪いから。』
やがて泣きつかれ、嶋はΩの両腕に閉じ込められて眠る。頬に残る涙の痕が、痛々しい。
紫はただ黙って、夢遊病者そっくりの瞳を寝ている相手に向けていた…。
翌朝、嶋が恒例行事となりつつある掛け布団を捲ると…珍しく、その日は勃っていなかった。
八月第二週
あっという間に過ぎ去る夏休みは、道端に落ちたアイスがどんどん痩せ細っていく様に似ている。
のそのそとベッドから這い出した嶋は、そのままダイニングに向かう。廊下突き当りの扉を開くと隙間から我先にと美味しそうな匂いが鼻を擽る。
「…ああ、おはよう。」
「おう。はよ…。」
食卓に皿を並べていた紫が、口元を綻ばせる。…どきりとした嶋は、さっと視線をそらした。何とも言えない焦燥感が、彼の中に充満する。顔をそらした先にはカレンダーが壁に掛けられていた。今日は第二週月曜日。日付を確認すると、早くも折り返しが目の前に迫っている。
「…嶋。」
さっと振り向くと、目と鼻の先に紫が佇んでいた。心臓が口から飛び出そうなほどびっくりする。
「え!?う゛…。な、何??」
「…目。」
紫の繊細な指先が、同級生の目元にやんわりと触れた。
「腫れているよ??どうしたの??」
(う…っ)
嶋には心当たりがあった。昨日の夜、夢の中で無様にも泣いてしまった。枕がしっとりしていたから、まさかとは思ったが、どうやら現実でも涙を落としていたらしい。
「…いや、大したことじゃないから。」
さりげなく、紫の手を退ける。ほっそりとした手首は、力を込めると簡単に折れてしまいそうで、どうしても意識してしまう。
「なるほど??」
紫は払われた手を腰に当て、若干顎を浮かせる。知ったかぶりな表情に、嶋は動揺を隠しきれない。
「な…何だよ。」
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