アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
79
-
起きた、と認める前に不作法に伸びてきた腕に胸倉を掴み上げられ、乱暴に引っ張られる。
「うわッ‼?」
紫の吐息が、若いαの鼻先に掠める。硬直するαに、紫がドスの利いた低音で喋りかける。
「…何で起こしてくんなかったの。」
初手、文句。嶋は降参とばかりに肩の高さまで手をあげて、繰り返し頷いた。
「ごッ、ごめん、ごめん‼オレも今まですっかり寝ていて、さ…。」
パッと手が離される。安心したのもつかの間。即座に立ち上がった紫の身体がグラ~リと不安定に揺らいだ。立ち眩みでもしたのか。
「ゆ、紫ちゃ…っ‼」
慌てて支えると、『余計なお世話』と不機嫌丸出しの声で手を叩かれる。…そっけない相手の態度に、嶋はキィッと目に見えないハンカチを噛んで引っ張る。
「今、何時??いい加減、料理始め…うっわ、何それ。八時過ぎ!?」
不機嫌極まりない同居人の叫びに、嶋も釣られて声をボリュームを上げる。
「オレ、手伝う‼」
「風呂掃除は??」
「あ…っ。」
静かになる同居人に、紫は微苦笑してみせた。
「…わかった。じゃあ、風呂掃除が終わったら、僕を手伝って。」
「…おう。」
嶋は首肯を示しつつ、年齢に似合わない家庭的な会話にどこか面映ゆさを感じていた。
数時間後。時計の針が八時半を通り過ぎた頃に二人は食卓についていた。手を合わせ、食べだす。今日の夕食は、ご飯に麻婆茄子、オクラのおひたしに野菜と卵の炒め物だ。先刻、席についた途端、麻婆茄子のいい匂いに刺激されたか。嶋の口腔からじゅっと唾液が溢れ出た。
さっそく、大盛りの白飯の上に麻婆茄子の大皿からすくった一口をそっと乗っける。禍々しいほど妖しく赤い、所々オレンジの部分があるソースが白い飯に伝い落ちて、一体となっていく姿は見るからに食欲をそそる。勢いよく茄子を乗せた白米に齧り付きつつ、嶋は一口食べてから同居人に問いかける。
「…なんか、さ。近頃、紫ちゃん具合悪くない??図書館にも丸一日行けないし、外出も短い時間じゃないと難しそうだし。」
紫はのろのろとオクラのおひたしを口に運びつつ、不機嫌そうに瞳を伏せる。
「…別に、何でもないって。こんなの…。多分、フェロモンが不安定になっているんでしょう。」
「不安定って…。」
箸先を下唇に押し当てる嶋にも、覚えはあった。紫が毎晩夜這いしてくる、あの肉体を苛む妖艶な夢。
「…そっ、か。」
_
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
79 / 146