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「………………ん」
さっきまで暗闇にいたのに、急に光が差し込んできた。
誰かが呼んでいる気がする。
(でも、誰だろう)
そんな疑問が頭に浮かんで、最悪の人物が脳裏に出てきた。
「……凪」
その名前を呼ぶと、喉が焼けるように痛くなる。
やめて、やめてよ。
もう、こんな地獄から抜け出したい。
誰か…
あの人の名前を呼ぼうとした時、不意にある問いが出てきた。
「……僕に、助かる資格なんてあるのかな」
こんな僕助けた所で、あの人にはなんの得にもならないかもしれない。
そんなマイナス思考が働いて、肩が震える。
「僕の存在意義は……何?」
「……っ……」
…誰?
だんだんと大きくなっていく呼び声が、耳障りという感覚になる。
「な……っ」
誰だかわからなかった声は、段々と明確になっていった。
「……ゆうにぃ…?」
その名前を口にすると、さっきまで一筋だけだった光は視界中に広がり、眩しい感覚に陥る。
「……夏」
完全にゆうにぃの声になって、その声に向かって必死に叫んだ。
「っゆうにぃ!!」
その瞬間、視界が鮮明な色を写した。
ハッと目が覚めたことを、脳が遅れて理解した。
「……ゆぅ…」
もう一度彼の名前を呼ぼうとしたら、手に温もりを感じた。
その手を見てみると、誰かの手が重なっていた。
その手の主を見た途端、不意にポロッと涙がこぼれた。
そこには、ベットに顔を突っ伏して、すぅすぅと寝息を立てているゆうにぃの姿があった。
「……ゆぅ…にぃ」
そう小さくつぶやくと、重なっていた手がピクっと動き、ゆうにぃが目を開いてガタッと立ち上がった。
「……っ夏!平気か?
どこか体痛いとかあるか?」
「……ゆぅ…に……」
まるで状況を理解していない僕は、キョトンとするが、ゆうにぃの慌てっぷりで全てを察した。
「……みたの…?」
それだけ静かに質問すると、ゆうにぃはバツが悪いように俯いた。
「凪のこととか、全部…みたの?」
そうさらに質問を重ねると、ゆうにぃは俯いたまま、ガタンと音を立てて座り、膝の上に手を乗せてぎゅっと握った。
「……ごめん。」
弱々しく漏れたゆうにぃの言葉に、何かがプツリと切れた気がした。
それが合図かのように、ボロボロと目から涙が溢れて…頬を伝ってポタリとシーツに落ち小さなシミができた。
そんな僕を見て、ゆうにぃはぱっと俯いていた顔を上げてあたふたし始めた。
「……みら…れたんだぁ…」
不意にポツリと零して、頭の中がぐるぐると回るような感覚になる。
(なんか…へんだ
まるで自分の頭じゃないみたいな…)
すると、段々と息が上がってきているのを感じて、あせる
(あ、やばい…これ、)
「もう僕を見ないで」と強く願うが、それも虚しく、ゆうにぃは僕をずっとみている。
肩を震わせ、ベットに体育座りになると、呼吸が乱れていく。
「…夏?だ、だいじょ((」
そう言いかけたゆうにぃの言葉を遮っていった。
「っ……はっ…だい、じょうぶ…だから、はぁ…もう、出てって……」
必死に告げた僕に、ゆうにぃは眉間に皺を寄せ、僕に触れようとする。
反射的にゆうにぃの手を払い、はっとした。
(…殴られる…)
父と過ごした日々が走馬灯のように頭に鮮明に蘇る。
「っごめ…んなさ…」
そう必死に言うと、ゆうにぃが僕に近づいてくる。
やめて、こないで
そんな感情を抱きながらビクッと肩を震わせた。
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