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「風見さん!」
盗撮魔からふたりを救った貴志は、風見の元へ走った。
「あ、篠崎さん。」
風見はホッとした。
地球儀を持って歩く大吾の襟首を摘んだ。
「大吾くん、ちょっと止まって。」
「ワォン!」
貴志は大吾くんと呼ばれた男の子の目線になってしゃがんだ。
「大吾くんて言うの?こんにちは!」
「ワォン!」
犬のマネをする大吾くんの頭を撫でた。
「篠崎さん、ちょっとだけこの子が離れていかないように見て貰えませんか?ご家族とはぐれているようなんです。」
あらら。
「大吾くん、お兄ちゃんと一緒に居ようね。」
「ワォン!」
駆け出そうとした腕を掴んだ。
危ない、危ない。
新宿駅で見失ったら、終わりだ。
貴志は警戒されないように、にっこりと人好きのする笑顔を向けた。
「大吾くんは犬が好きなの?」
「ワォン!ワォン!」
犬の設定だね。
貴志も風見も、まさかポイントカードのこととは思っていない。
犬のマネをしているものだと信じていた。
「あ、もしもし、小夜。光太郎くんと連絡取れるかな?」
電話を掛け出した風見を、大吾は目を大きく開いて見上げた。
にぃちゃのなまえ!!
このおじちゃん、にぃちゃを知っているのだ。
「そう、大吾くんがひとりで彷徨っているんだ。・・・そう、保護してる。」
にぃちゃ!
にぃちゃ!
電話を代わってほしくて、地図をおいておじちゃんによじ登った。
「大吾くん、風見さんはジャングルジムじゃないよ。」
落ちないようにお尻を支えられながら、お腹にたどり着いた。
でんわまで、あとすこし!
「にぃちゃ!!」
「ん?俺の事?」
ちがう!
「にぃちゃ!にぃちゃ!」
ポケットからゼリーが落ちた。ゼリーに当たった地図がぐるぐると動き出した。
「とにかく、そっちに行くから。ん・・・よろしく。」
大吾の目の前で電話を切られた。
ウゥッ!
みるみる目に涙が溜まっていっているのを見て、男ふたりは焦った。
「だだだ、大吾くん!もうすぐ光太郎くんと会えるからね!」
「そうそう!泣かなくて大丈夫だよ、あっちに行こうね!」
風見が抱き上げて肩車した。
貴志は地球儀とゼリーを持ってついていった。
背後で「イヤーーーーーーーー!!」という悲鳴が聞こえた気がしたが、ふたりは子ども好きの小夜と会う事が最優先だった。
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