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嘆く父 <Side 霙
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僕は、βとΩの間に出来た子供だ。
「騒ぐなっ。霙に聞こえるだろ!?」
6歳の頃だ。
眠りから覚めた僕の耳に届いたのは、リビングから響いた父の抑えた怒鳴り声。
普段は穏やかな父が、苛立ちに声を震わせていた。
僕は、ひりつく空気に、眠っているふりを続ける。
「聞かせてやればいいんだっ。俺を恋しがったりしないようにっ」
母は、悔しさの滲む声を上げ、言葉を繋ぐ。
「だって、俺…もう、お前も、霙のコトも……愛してやれないっ」
掠れた声に、鼻水を啜る音が続いた。
「大丈夫だと思っていたんだ…。俺はずっと、お前たちを愛していけると思ってたんだ。[運命の番]なんて迷信だって……」
嗚咽混じりの声を放つ母に、父は息を詰まらせる。
「たけど。嘘みたいに消えた。お前たちを想っていた感情が、泡のように弾けて消えた」
尻窄みになる声と同じように、母の愛は、掠れて消える。
諦めと嘲りの混じる母の嗤いが、続き響いた。
「ごめん。……ごめんしか、言えねぇんだよ。一緒になんて居られない」
思い通りにならない気持ちに諦め嗤う母は、悔しさに涙を流していた。
どうにもならない自分の感情に、成す術もない。
それから数日も経たないうちに、母は家を出ていった。
Ωの母は[運命の番]に出会い、βの父と僕を捨てたんだ……。
年々、母に似てくる僕に、父は頭を抱えた。
中学への進学と同時に判明する第2の性別、バース性すらΩの判定を受け、露骨には見せないものの、僕を疎ましがっているのは感じ取れた。
市販の抑制剤は、僕の身体に合わず、効きが悪かった。
発情期の間は、常に熱が引かず、気怠い身体を引きずるように生活していた。
僕のフェロモンは、αばかりではなく、βの男をも惑わせるほどだった。
付き合って欲しいと言われれば、断る理由もなかった。
αに母を拐われた過去を持つ僕は、βの男とばかり付き合った。
……αが嫌いだった。
[運命の番]にさえ、出会いたいとは思っていなかった。
中学の頃、βとばかり付き合う僕に、父はストレスを抱えていた。
「傷つくのはお前じゃない。相手の男なんだぞっ。それでもお前は、…好きな人が傷つくとわかっていながら、βとばかりっ」
何を考えてんのか、わかんねぇっ…ぐしゃぐしゃと自分の頭を掻きむしる父。
Ωの僕の思考がわからないと、父は常々嘆いていた。
激しい発情期は、僕の貞操を縛れない。
恋人がいるにも関わらず、誘われれば、他の男とも寝ていた。
それがバレれば、当たり前だがフラれる。
それでも、男に困ることはなかった。
自分で言うのもなんだが、綺麗な顔立ちで、その辺の女よりモテていた。
誘われれば誰とでも寝ていた僕は、尻軽ビッチだと噂されているコトも知っていた。
そんな尻軽でもいいと寄ってくる男と、手当たり次第に関係を持っていた。
Ωの考えるコトがわからないと嘆きながらも、父は、親としての責任を放棄するコトはしなかった。
高校へも進学させてくれた。
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