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最後の引き金
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大学には進んだが、ほぼ通わなかった。
母には、大学の近くにアパートを借りると誤魔化し、霙の家に転がり込んだ。
霙の職場である花屋にも顔を出し、花屋を手放したいと言う彼女から店を買い取った。
大学も留年が決まった頃、見習いだった聡が秘書へと独り立ちした。
中学を卒業すると共に、本格的に父の秘書として働き始めた。
αに、学歴など関係ない。
βの才能など、αの足元にすら及ばない。
5つも下の聡は、簡単にオレを追い抜いていった。
20歳になったオレは、父親の後継は聡なのだと、改めて痛感した。
父は昔からオレに無関心だったが、輪をかけ、聡という育てがいのある人材に夢中になった。
どんどんと、母の理想から遠ざかるオレ。
そんなオレと父の関係に、母は疑念を抱いていた。
オレが父の機嫌を損ねるコトをしでかしたのではないか、と。
オレの金の無心は、母を動かす引き金となる。
母はオレを辿り霙の存在を知り、身辺を調査させた。
お金を渡すにしても、一度、顔を見せなさいという母に、なんの疑いもなく実家に行った。
実家に母は居らず、オレは何なのだと文句をいいながら花屋へと戻った。
表のシャッターだけが不自然に空いたままだった。
水やりだけなら、半分しか開けない。
営業しているのなら他のシャッターも開けているはずだ。
それに、霙にはオレが居ないときは、店を開けるなと言いつけていた。
不自然な店先の風貌に、店内へと足を踏み入れた。
「………っ?」
花屋に踏み込んだオレが見たのは、ひっくり返ったじょうろと、水浸しの床に散らばる紙の束。
その紙には、報告書の文字と盗撮されたような霙の姿が印刷されていた。
酷い惨状の床から持ち上げた視界に入ってきたのは、奥へと続く段差に、汚いものに触れるのが嫌だと言わんばかりに浅く腰かける母の姿だった。
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