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『告別』
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「雪都。暫くの間、雨を預かってくれないか。」
それは唐突に
いつもとは違う真剣な表情であった。
「いきなり、なんですか?」
「上のやつらに
時雨と俺の情報が全て漏れた。
赤子がいるということまで…
俺はもう奴らのとこには帰らない。
時雨と雨は俺が守る。」
零の話はこうだった。
今もやっとのことで
監視の目から逃れてきた。
時雨は全ての情報が出回ってしまっているが
雨はまだ赤子ということしか知られていない。
だからこそ万が一のことを考え
ここに置くのが一番の安全だと。
雪都と零は繋がりがばれたりはしない。
だが、時雨は顔まで分かられているため
見つかるのは時間の問題だと。
だから遠くへ逃げようと。
「そんな…」
「時雨も賛成した。だから、お願いしてもいいかな?」
いつもとは違う弱々しい笑顔。
本当は雨も自分の手で守りたいくせに。
この人は多分、雨の未来を考えているんだ。
自分と来ればいつ見つかって処分されるのかわからない状況下におかれるよりも、
ここで過ごした方が幸せだということを。
「もう、俺たちはここへは来ない。」
その後時雨が、いつもの笑顔でここに訪れ雨を
雪都へと手渡した。
「このこを、宜しくね。」
「時雨さん、何故零と離れようとは思わないのですか?」
自分がいつ殺されるかわからない状態で、それでも凛として零の隣にあり続ける。普通の人間のしかも
女ならば怖くて逃げ出すところだ。
「愛しているから、離れられないの」
強い女性だと雪都は思った。
「貴女は零には勿体無い女性です。」
「私もそう思うわ。」
いつもと変わらぬジョーク。
それも時雨らしい。
「必ず雨を迎えに来てください。」
「……当たり前だ。俺の大事な雨を傷物にすんじゃねーぞ。」
「あら、彼になら雨をお嫁に出してもいいわ。」
「時雨さん似だったら考えさせて頂きます。」
「………。」
明け方二人は雨の中
家を出た。
生まれたばかりの雨を置いて…_。
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