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『式と父』
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― ―――――――――――――――――
かつてから吸血鬼界の中に
大きな組織があり
それを、中心に日々過ごしていた。
昔こそ人間と吸血鬼は共に共存していたが
ある時より吸血鬼が恐ろしいものという文書が発行され
恐れられるようになり
今ではひっそりと暮らしている。
人間たちとバランスを保たたせる
中枢的な役割を式の父親は担っていた。
その背を見、式もまた成長した。
「良いか式。人間は私たちのように強くなく、すぐに死に、壊れてしまう。だからこそ情を持ってはならん。」
小柄な少年__式は頷いた。
「わかっております。」
「そしてもうひとつ、何故人間と必要以上に交わってはならぬかわかるか。」
式は顔を伏せる。考えているのだろう……
「私たち特に上級吸血鬼は
その血を途絶すことも穢す事も赦されない。
この血を誇るるべきものだからだ。」
父の話はまだ難しいのだろうか。まだ感情表現の足らぬ式はゆっくりと
頷いた。
「お前は私の後を継ぐ。そろそろ狩りにも出てもらうぞ。」
情が移る前に消す。
それが本当の狙い。
しかし吸血鬼と人間が恋に落ちることは多々あることだった。
それも容赦なく人間の方を切り捨てた。
式は何も思わなかった。
彼自身まだよくわからなかったから。
けれどわかってしまう。
その人たちの想いが……
共鳴して、流れ込んでしまう。
年を、裁きを、罪を重ねる毎に
その想いに共感をすることも多くなった。憐れむこともするようになった。
だがそのたび言い聞かせた。
誇りを裏切ったものに、
情けはいらない。
いつしか排除は人間のみだったのが
吸血鬼を、仲間を切ることまでも
命令されるようになった。
自分の能力を、恨むことはなかった。
ただ一つのエピソードとして流していたから……。
だからあの日も同じだった。
ただ違ったのは、
裏切り者は
上級階級者
両者の抹殺
この二つだった。
人間と逃走した二人を
迷いなく処分した。
その数十年後だった。
淡い青色の髪の少年が
その両親の仇を討つために
上級階級に乗り込んできたのは。
執行組織の仲間や、
式の父親が討たれたのは。
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