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『先に気づく者』
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コンコン……
「緋色兄さん……」
緋色の部屋のドアを開け入ってきたその人影は
刹だった。
「……雨と式はどこ?」
「リビングやで~」
「あ、白葉兄いたの。」
「ひどいやっちゃ。」
そんな白葉を横目に刹は
緋色の前に出る。
「緋色兄さんに聞きたいことがある。」
静かに、そして力強い声で
緋色に問いかけるその様子から
普通の話では無いことが優に伺える。
「俺外しとこか?」
「別に、いいよ。いても。」
「……なに?」
どこまでも優しい笑で問いかける
緋
「緋色兄さんは……レイをどうしたいって思ってるの?」
「……質問の意味がよくわからないね。」
僅かに眉間にシワを寄せる刹をよそに
なおも緋色は笑みを浮かべていた。
「レイの記憶はあまりにも断片的すぎる。
過去に何があったか、何故記憶が途切れ途切れなのか……。レイが教えてくれた。自分が育ってきたそれまでの記憶もないって。
そしてさっきもう一度雪都さんの元へ行って確信した。」
「それで?」
雪都というワードにわずかながらに反応をみせる。
「確か緋色兄さんは記憶を操ることが出来る。前にちらっとそれを見せてもらったよね。」
そこでようやく緋色の笑顔は曇った。
「そうだっけ。」
「おんなじ能力をもつ人を知っている。でも、その人は、自分が消す前に自らレイが記憶を消してたという。
あれは嘘じゃなかったと思う。子も同然に育ててきたレイの記憶を消すなんて有り得ない。
そしてショックを受けただけで
今の今まで記憶が戻らないことも
おかしい。だって同じ行為を何度もされてるはずだから。
その出来事を重ねて思い出す機会はいつでもあったはず。
でもそんな素振りまったくないんだ。
だから思った。
· · · · · ·
誰かが故意的に消したとしか考えられない。 」
「……そこまであいつは話したのか。
なら、もう気づいてるんだろう?」
「………いつレイと出会ったの?いつから記憶をコントロールしてるの?」
今までまっすぐ見据えていた緋色は目を伏せ少々考えているようだった。
「それはお前には関係ないよ。知るべきことでもない。」
「じゃぁ、どうして記憶を消す必要があったの?!なにを隠してるの?!」
それまで冷静だった
刹が声を荒げ始める。
わからない、とまるで子供が
親に反抗するかのように。
「やめえ、刹。落ち着き……。」
それまで黙ってた白葉が食ってかかる勢いの刹を宥めた。
「雨を雪都から離すため。」
冷たく言い放つ彼には
最早いつもの優しい笑はなかった。
そしてそこから
雪都と、緋色 二人の関係が良くないことは伺える。
「他に質問はあるかい?」
冷ややかなこんな緋色の目は
刹も白葉も見たことはなかった……。
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