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『いとおしい』
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次に雨に会うのは少し怖かった。
記憶を無くした事で
生活に不自由を感じさせてしまうことになるのを
知っていた。
それでも緋色は後悔していなかった。あのままの記憶をあの子に残すよりは全然いい。
それに‥‥
『雨‥‥』
『見つけた。緋色にいさん。』
雨の日、雨はやはりここを訪れた。
ニコリと微笑みかけると
こわばっていた雨の表情が和らいだ気がした。
『雨。大丈夫?』
『‥‥うん。』
聞きたいことはたくさんあるだろうに
雨は黙って緋色の隣に座り空を見上げた。
『‥‥窮屈だよ。今が。なんでだろう。
なんにもわからない。』
『‥‥寂しいかい?』
あの日問われたことを
逆の立場で聞き返す。
すると雨はふるりと頭を振った。
『緋色にいさんがあるから。』
その弱々しい微笑みをみて確信した。
(あぁ、俺は・・・・・雨が欲しい。)
狂おしくも愛おしく
寂しがりで強がりな。
『雨、俺のことは緋色と呼んで。』
君に惹かれたなんてこと
初めから知っていた。
だからこそ君の記憶を全て奪ってしまった。
だからこそ俺の記憶は消せなかった。
愛しいものなどできたことない緋色は
手に入れるその方法を知らなかっただけ。
( 俺以外のことなど知らなくていい。)
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