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❖番外編❖ 小さな花
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※続編感謝企画です。
Twitterにて募集したアンケートを元に書いたちょっとした裏ストーリーをお楽しみください٭❀*
____俺の幼少期は地味だ。
苦手なものはたくさんあるのに、特技と呼べるものが見当たらない。
特に手先が不器用で字を書くのもかなり下手だった。
「椎名、字かくのへったくそだなぁ! おれの方がうまい!」
「っ、へたって言うな」
「へたへたぁ〜」
「うるさい!」
誰かに自分のコンプレックスを指摘されるのが辛くて泣きそうになりながら怒鳴る。
こんなことはよくあって。
母親はそれを傲慢だといった。
頑張っても頑張っても、誰も褒めてくれない。
そのいつの間にかやめられなくなっていた"頑張る"というムダな行為を、自分のことのように褒めてくれる人がいる。
その人はとても芯が強く、優しくて__
「そのスウェット、エロいなー……」
根っからの変態だ。
「ジロジロ見ないでもらえますか」
「優斗は尻も脚も綺麗でそそられるよ」
「っ、殴りますよ。誠くんが来てるのに……」
そう、今日も家に誠くんが遊びにきている。
なんだか恒例行事だが、5歳の子どもでも恋愛感情というのは持ち始めるらしい。
いつも無表情に近い誠くんは陸の前だとよく表情が変わることに気づいた。
陸より身長が少し高くて正反対に大人びている。
初めはお兄ちゃんのような存在だと思っていたのに、最近は違って見えて。
「陸くん、オモチャだしたらお片づけしないと」
「まだあそぶのぉ。マーちゃんもナイしゃんとあそぶっ」
「でもそれナイしゃんじゃないよ? でんしゃのオモチャそこになげてあるもん」
「んんー。マーちゃん、ててだして」
「なに?」
陸は誠くんの手にボタン目の人形を置いた。
海外モチーフで作られたらしいこの家にある唯一の人形だ。
「この子、陸のおともだちだからマーちゃんにもおしえてあげる」
「……」
ふしぎなことに、陸は誠くんの前だとさらに甘えたがりになる。
相対効果でそう見えるだけなのか。
笑顔の陸に口をとがらせた誠くんは、人形を手にしたまま陸の手をにぎった。
「陸くん、いっつもそうじゃん……」
「?」
「ボクのこと、すぐトモダチに紹介する。なんで?」
「おともだちいっぱい、たのしいもん。マーちゃんのこと好きだからおしえるの」
「……そういうのやだ」
「どして? マーちゃん、陸のおともだちキライ?」
意図が分からない陸は少し泣きそうな顔をする。
やばいかなと思い腰を上げようとした。
だが、誠くんはギュッと手をにぎりひざを立てると真摯な目を陸に向けた。
「ボクは、陸くんといるのがたのしいの。ほかの子と話したいんじゃないんだ」
「……」
瞳をうるつかせていた陸が嬉しそうな顔をする。
キャッキャとはしゃぎ始め、誠くんに抱きつく。
なんだか可愛い告白シーンを見てしまった気分だ。
「えへへぇ、マーちゃんも陸だいすき。うれしぃっ」
「っ、くっつかないで」
「やだぁ。マーちゃん好きなのぉ」
「陸くん、すぐ好きっていうじゃんっ」
「じゃあねー、だいすきっ」
「そういうもんだいじゃないの。もうしゃべっちゃダメ」
あれ、もしかして上手くいってる……?
抱きついてくる陸を引き剥がそうと必死な誠くんは、顔が真っ赤だった。
「がぶっ」
「もう陸くんっ、ともだちやめるよ」
「やだ! もうしないっ」
「はずかしいから、手たべないで」
イスに座り2人のイチャつきを遠い目線で眺めていると、亮雅さんがキッチンから顔を出す。
「優斗、ちょっと手伝ってくれ。デザート作りたいんだ」
「あ、はーい」
窓から差し込む光がふたつの小さな花を照らしている。
年齢も性別も関係ない。
好きだという気持ちに、罪なんてない。
窓に張りつき晴れ空の下で輝く庭を眺めている2人のつながれた手に、そう教えられた気がした。
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