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❖番外編❖可愛い癖(亮雅side)
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嫁と離婚して以来、頑なに彼女を作らなかった俺の隣には愛おしい恋人がいる。
生意気なツンデレを発揮する可愛さは例えるならエベレスト級で、かと思えば時折人格が変わったように控えめになる。
それがなんと男なのだから、初めは自分でも頭がおかしくなったのかと思った。
「あ、の……松本さん」
「ん? どうした」
「冴島中学の修学旅行費と夕食の弁当代、エージェントの佐川さんが10%ではなく15%でいただけないかと交渉してきてて……」
出会いから1年、後輩もできた優斗は経理課の部下で仕事ができる男だ。
新人の頃から覚えは早く手先も器用で、書類作成だけで金が取れるほどExcelやWordを簡単に使いこなす。
だが、一方で自信のなさから自虐が激しくかなりの不器用だった。
「冴島中学は校長からの要望が多くて、本来は旅行代理店の方からお断りを何度もされていたみたいです。でも食い下がらなかったそうで……」
「それで割に合わないってか」
「ええ……たぶん」
さっきから、優斗はデスクの下で手をにぎったり甲を擦ったりと落ちつきがない。
出会ったばかりの頃、事情を知らなかった俺はその手癖を注意していた。
もしも営業や接客をするならその癖が顧客の不安を煽る要素につながる。
だがそれはどうやら精神的なストレスや緊張からくるものだと看護担当の絹井さんから教えられた。
要は精神安定のためらしい。
ストレスから震えやかゆみが起こるのは知らなかった。
「課長が帰ってきたら確認しておくよ。とりあえず、手数料の話は保留でとメール送っといてくれ」
「! は、はい」
さりげなく優斗の手をにぎって擦る。
疾患の辛さに対抗して1人で頑張ろうとする優斗が可愛く思えてしまう。
こうして手を擦ってやると徐々に落ちつきを取り戻すことも知った。
「亮……松本さん、誰かに見られ……」
「こうした方が落ちつくだろ? 大丈夫、なんか言われたら俺のせいにしていい」
「……」
頬を赤くして、ふるえる手でこっそり握り返してくるのが可愛い。
精神状態は正常でも何度かこういうことがあるようだ。
優しくなでているうち、さりげなく指を絡めた。
「!」
「ふ、可愛い」
「駄目、です。メール打てない……じゃないですか」
「顔が赤いぞ。仕事中なのに気が抜けてるなぁ」
「っ……誰のせいです。離してください」
「もう大丈夫か」
唐突に真剣な顔で聞いてみれば、優斗は動揺したように目を泳がせてコクリとうなずいた。
ダメだ……なにやっても可愛い。
俺は中毒なのではないかというほど優斗を溺愛している。
直接惚気けているわけではないが、関係を知っている早見が勝手にドン引きするほど好きのオーラがひどいらしい。
「つーかそれ、いつになったら捨てるんだ」
「え?」
デスクに挟んであるメモ。
新人である頃にシステムをいじって待っているよう指示を残したが、あろう事か優斗は1年ものあいだメモを保管している。
字も綺麗ではないというのに、これではまるで恥さらしだ。
「……嫌ですか?」
「嫌じゃねえけど恥ずいだろ? そんなメモ残されても」
「思い出に、なるかなって。出会った頃の」
「……」
これだ。この無自覚に誘う顔。
会社でこの顔をされるこちらの身にもなってほしい。
キスをしそうになり、少し目をそらして耐えた。
「あーそう。別にいいけど、桜田がいちいち茶化してくんのが面倒なんだよ」
「あいつ絶対好きですよ。松本さんのこと」
「だろうなー。あんだけ絡んでこられたら逆に可愛く見えてくるっつーの」
「仲よさそうで……ホッとしました」
「お前はこれ以上モテるな。もう桜田だけで手一杯なんだよ」
「俺はでも、亮雅さんだけです……ずっと」
「っ…………」
チラ、とこちらを伺う優斗を抱きしめられないのが酷だった。
周囲の反感を恐れるくせにこういうときは大胆だ。
俺がいつもいつも腹立たしさと戦っていることなど知りもしないだろう。
腹いせにこっそり首の裏筋へキスをしてやると、優斗は声にならない叫びを上げた。
-END-
次回、近日中に番外編2(克彦side)をおこなう予定です。
たくさんのご投票ありがとうございました٭❀*
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