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「なに、ッ……」
抵抗した俺を離さない腕に、幼少期の記憶が重なっていく。
「すまない、優斗。すまない……」
「っ……父さん」
「怯えないでくれ。本当にごめんな」
「……」
震える俺の背をなでる手。
温かくて優しくて、涙が止まらなかった。
「お父さん……父さっ……」
「……やっぱり優斗は、誰よりも優しい子に育ってくれたんだな。また会えてよかったよ、お前に」
「ッ……優しく、なんか」
ふ、と笑った父の手が昔より小さく思えた。
俺はずっと、こうして愛されたかった。
父さんは俺を見放してはいなかったんだ……
接し方に困っていたのは俺だけじゃない。
もっと早くそれを知れていたら。
「____俊太くんだったね。せっかく遊んでいたのに、時間をとってすまなかった」
「いえ、おれは全然」
恥ずかしげもなく泣いてしまった自分の顔を隠すように俯いていると、父にまた頭をなでられてビクッと肩が跳ねた。
「な、なんだよ」
「はは。元気そうでよかった」
「……父さんも」
「あぁ、元気だよ。友人家だけどしばらくこっちにいるから、たまに会いに来てくれないか? 克彦と一緒にでも」
「もちろんですよ、パパさん! 優斗はずっと会いたがってましたから!」
「はっ……なにを勝手に、!」
ぐいっと引かれた手を振り払い、誇らしげな笑みを浮かべる俊太から視線をそらす。
「なんか、ムカつく……」
「まったく素直じゃないな〜、優斗くんは♡」
「ははは、いい友達がいるじゃないか。優斗」
「……よくないし」
無機質に感じていた父の表情が優しいものになった。
なったというより、俺がそう見ていただけだ。
父さんは俺のことを考えていてくれたんだ……あの頃から。
「それじゃあ、俺はこれから用事があるから」
「……うん」
まだ話していたい。
内心でそう思っている自分が不思議だった。
こんなにファザコンだったとは……
「あー、そうだ」
「?」
「優斗のパートナー、また今度挨拶させてくれ」
「……え?」
軽く手を挙げて去っていく父の背中に唖然としたまま動けなくなる。
「……パパさん、もう知ってんの? 相手が男って」
「ああ……知ってる、と思う。俺がゲイって、母さんがもう言ってるから」
「そっか。優しいお父さんじゃん」
「…………そう、だな」
「なるほどなー、優斗の優しさと美形はパパさんの遺伝かぁ。ほんとそっくり」
「やめろよ……恥ずかしいから」
「ふは、なんなの。めっちゃ可愛いじゃん」
うるさい、と俊太の頭をはたいて黙らせた。
少し嬉しい。
いや、本当言うとかなり嬉しい。
また会いに行ってもいいんだ、父さんに。
俊太と別れて家に帰った俺は、真っ先に克彦へ連絡した。
『は? 親父に?』
「うん。克彦も、休みの日にどうかなって」
『……はぁぁ。クソ親父に会えるってだけでそんな嬉しいか? やっぱおまえアホだな』
「なっ! 嬉しいとかじゃ、なくて……その」
『チッ……こっちの身にもなれっつの』
「え?」
思っていたより乗り気じゃない克彦には呆然とするしかなかった。
1人で舞い上がってる自分が恥ずかしい。
「い、嫌なら……俺1人で会うから」
『別に嫌じゃねえよ。ガキは学校か?』
「ガキって言うなよ。陸、今日誕生日なんだ。学校行ってるけど」
『は、めんどくせ……まぁいい。親父に会いたくなったら連絡しろ。まぁまぁ融通は利く』
「……ありがとう」
なんだかんだで、陸のことを気にしてくれているのは嬉しい。
克彦の口悪さにようやく慣れ始めている自分がいて、どこかホッとした。
『っ、あーくそ。いちいち礼を言うな』
「な、なんで。それくらい言うよ」
『だからお前はっ…………松本に手上げられたら絶対俺に言え。ぶち殺』
「ない! 亮雅さんが俺に手上げるわけないって言ってるだろ!?」
『甘すぎなんだよお前が。あんなサイコ野郎を信じられるかっての』
「亮雅さんはサイコじゃないし、克彦が思ってるより優しいんだよ」
俺が悪夢にうなされた時も、抱きしめてずっとなでてくれた。
亮雅さんには頭が上がらないほどの愛を、俺はもらっているんだ。
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