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『____もしもし? オレやけど』
「おい今泉、今日優斗に会ってないか? 少し、まずいことになってるんだ」
もはや誰が嘘をついているのかも真剣に見極めなければいけなくなった。
わざわざない噂を本人に流すとなれば、俺たちに恨みがあるやつの仕業だろう。
『ん……えー、会ってへんけど? まずいって、そないに大変なんか』
「……あぁ」
変な違和感を覚えた。
こんなに挙動不審なやつだったか?
『あ……あーせや、オレこれから用事があるさかい、切らしてもらうで』
「待て。お前……なにか知ってるんじゃないのか? 態度がおかしいぞ」
『へ、ええ? 気のせいやて! ほんまに知らんし』
「ああ、そう。なら用はない」
どこか引っかかる。
俺がおかしいのだろうか。
通話を切って、思わず頭を抱えた。
優斗は他人の言葉に敏感だ。
悪い言葉ほど信じやすい性格のあいつが俺にこんな怒気のこもったメッセージを送ってくるとなれば、相当応えているだろう。
「クソっ……全然分からねえ」
だがその時、ふたたび今泉から電話がかかってきた。
「なんだ」
『……』
「おい、今泉?」
『…………悪い、亮雅。認めるわ』
「は」
『オレが……優斗を騙して、攫った。ほんまにすまん、ほんまに……』
なにかに絶望したような今泉の声色に、嫌な予感は的中する。
「っ、優斗は今どこにいるんだ。教えろ!」
『……案内、する。せやけど、無事では……ないと思う』
「は? どういう意味だ」
『っ、すまん。大金と引き換えっちゅう条件で、優斗を売ったんや……チンピラ共に』
スマホを投げそうになった。
なにを言ってるんだ、こいつは。
「お前っ……本気で言ってんのか」
『し、仕方なかったんやッ! こうすればっ、金をくれるって話やった……オレは、こうするしかなかったんや!』
「……」
絶句した。
優斗は今泉に利用され、俺と引き離された上に得体の知れない男たちに攫われたというわけか。
込み上げてくる怒りを抑えられない。
早く、優斗の元に行かないと本当に大変なことになる。
待ってろ……優斗!
____
運転中、今泉は青い顔をしたまま自らは口を開かなかった。
今にも掴みかかってしまいそうだったが、そんなことをしている暇もない。
優斗を助けることが何よりも先だ。
「許してくれ……亮雅、許してくれっ」
「……」
数十分ほどで到着した民家は、都会から少し離れた田んぼ道の先にあった。
古く薄汚れたそこは人が住んでいると思えないほど老朽化して見える。
随分と小さな家だ。
「ここや……」
車を降りて足早に玄関先へ向かう。
激しく鳴っている心臓の音が脳にまで響いてくる。
無事でいてくれ……優斗。
心中で願い、玄関のドアに強く蹴りを入れた。
「な、なんだッ」
奥の部屋から男たちの声がした。
大股で歩み寄り乱暴にドアを開けた瞬間、薄暗い部屋の片隅に固まっていた男がこちらを向く。
男の手が、細く白い誰かの腕を掴んでいる。
……!
それが生気もなくぐったりした優斗だと分かった途端、制御できない殺意が芽生え始めた。
「てめえ……ッ!」
「な!? なんでこいつの彼氏がここにいんだよ! 誰が教えやがった!」
「優斗から離れろッ!」
男の首根っこを掴んで優斗から引き剥がし、顔面に拳を打つ。
「この野郎ッ……よくもアニキを! フガッ!」
飛びついてきた男の腹を蹴り上げ、ポケットから刃物を取り出す金髪野郎にも一発拳を喰らわせる。
骨の歪む音が聞こえたが、それだけで許してやれるほど正気ではない。
「や、やめろ!! 」
「あ? やめるわけねえだろ……お前らがしたことはこんなもんで許されねえよ」
「うぐぁッ!」
胸ぐらを掴んで鳩尾の辺りに膝蹴りを喰らわせると、男が痛みに悶えて叫び始める。
「こ、の……ヤローッ! ふがぁッ」
「……っ、ヒイィィ! あ、あんた……何者だよ!」
倒れて気絶している男を一瞥し、壁際に逃げた男を睨む。
滑稽なほど顔面蒼白になっていた。
「…………」
「わわ、悪かった!! 金ならいくらでも渡す! だから見逃してくれッ!」
「は? 金ごときで解決する問題じゃねえんだよ」
「ヒッ……うがァッ!!」
男の側頭部に足蹴りが命中し、倒れて動かなくなった。
本当なら殺してやりたい気分だ。
だが、倒れたまま震えている優斗の姿が目に入り急いで駆け寄る。
「優斗ッ、大丈夫か!」
「ッ! 嫌だ! 触るなっ!!」
「優斗、俺だ。亮雅だよ、大丈夫だ……なにも怖くない」
「嫌っ……気持ち、悪いッ……誰も信用してない!」
優斗は俺と目を合わせようとしない。
ひどい震えで正気が保てなくなっているようだった。
クソッ……!
男たちや自分自身への怒りでどうにかなりそうだ。
暴れる優斗を強く抱きしめ、「大丈夫だ」と何度も頭をなでる。
「大丈夫だぞ……優斗、もう安全だ」
「っ……! 亮雅……さん、っ……」
ようやく安心することができた優斗は俺の肩に顔を埋めて震えていた。
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