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もんじゃ
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うちの台所アコーディオンカーテンなんやけど姉貴と松永二人で料理作りよる間リビングでボケッとしとるのも暇やし様子見に行った。
「おぃいいいいい!!」
台所で料理してる松永に背後から姉貴が抱きついとった。
松永鍋かき回しながら困った顔しよる。
「なんしよるーん!?離れろやーっ!!松永にその乳押しつけてもなんとも思わねーんだよ!!」
「松永君ほんとかわいいわーこんな弟欲しかったんよねー」
「.........どうも」
俺と同じで姉貴も背が高くて170ちょい?松永が姉貴より身長低いんよね。
モリクミたちがまーた仕事終わって襲撃する言うけん松永が料理作るのにベタベタすんなやー!!
「姉貴も手伝えよ!!」
「手伝いよろーもん」
「松永にベタベタしてるだけやん!!」
「そんなことないよねー?」
「.........そんなことないです、はい」
俺の姉貴やけんはっきり言えんだけで迷惑しとるやないかーい。
小姑に愛されまくるのも問題やな。
んで姉貴に負けじと松永に抱きつく。
「これ俺のもん」
姉貴と俺に両側から抱きつかれて「はぁーこのバカ姉弟がっ!!」と思ってやがるなって呆れた顔しながら鍋かき回す松永。
「出来たのでリビングでみんなが来るの待ちましょう」
三人でやつらが来るまで雑談しよった。
松永の新しい職場が出張なくて残業も滅多にない感じになったんやけど飲み会に誘われまくりでげんなりしとるらしい。
「飲みに行こうって仕事終わるとしょっちゅう誘われるんよね......」
「なん?松永君の職場そんな飲み会あるん?」
「うーん理由つけて断ってはいるんですけど毎回断りきれなくて」
「今のとこ女多いらしいんよ」
「ははーん。好かれとるんやね。狙われとるんよ」
事務系の仕事なんやけど女が多い課に配属されたらしくて松永の話聞いとると姉貴の言う通りなんやろーねーと思う。
松永本人は気付いてないけどね。女上司も男上司もおるんやけどかわいがられてはいるらしい。
「さぁそういうんじゃないとは思いますけど.......前のところはそういうのないし僕出張とか多かったし個人ワークな仕事だったから息苦しい。めんどくさい」
「松永人付き合い苦手やけんなーwwwww」
「うん。ただ緒方さんと津島先輩の口入れだから会社に誰か僕の監視役してる人いそうだけどね。僕になんかないように見てる人が誰かいるとは思う」
「そうなん?」
「あの人たち心配性だから。あと質問攻めされるのもやだ」
まぁ入ったばかりやしこげな見た目やけんいろいろ聞きたいんやろう。
プライベートな質問ばかりらしいけど俺のことを「いとこ」と一緒に住んどるって説明しとるらしい。
俺が一回飲み会の場所まで車で迎えに行ったけんそれで俺も質問の対象になってしまったけんしょうがなくそう言ったそう。
「あの人誰?かっこいいって女性社員の人たち言いよったよ」
「そかそか。松永も大変そうやねー。女だけじゃなくて男も気を付けろよー。セクハラされんようになー」
「男?」
「ゲイはどこにでもおるけんな。松永みたいな見た目好きなやつやったらやばいやろ」
「ないと思うけど.......」
「気は抜くな。松永の見た目がタイプやないけどお前に惚れてしまうってことあるみたいやけん」
「は?」
「吉野とかそうやったやん。吉野が男っぽいガチなやつ好きやったのに松永に惚れてしもうたやん」
「うーん.........」
「何!?吉野君とあんたたち三角関係やったん!?」
「違うっつーの。あいつがとち狂って松永に勝手に惚れただけ。俺ら相思相愛で全然相手しとらんかった」
んーな話しよったらやつらが来た。
「お姉さんこんばんはーこれどうぞー」
いつもやったらモリクミ先頭で飛び込んで来るのに姉貴おるけん鎌やんが部屋に一番に入って来よる。
「ありがとー綺麗ね」
バラとかwwwwwこんなん恥ずかしげもなく渡すの初めて見たわ!!鎌やんどんだけ俺の姉貴狙ってやがるんか......こいつの本性知らんやろう。家やとバリ女捨ててるぞ。鎌やんの本性も姉貴知らんやろうけど。
「このクソっ!!あたしの前歩くなっ!!あーんお姉さまーん!!松永くーん長野くーん!!仕事も手につかない程今夜会えることばかり考えていましたーん!!あーん!!」
「姉貴来てからお前毎日のように来とるやないかい........」
「あーん!!あたしのお姉さまーんにもなりますのでー!!今のうちからいろいろとー!!」
「お前脳内でどんな妄想見てんだよ......」
鎌やん、モリクミが先に現れて奥田と吉野が最後に現れた。
「てめぇええええらぁあああああ!!ご飯待ちしてんだよっ!!てめぇらのせいでご飯待たされてんの!!」
入って来た吉野と奥田、モリクミからタックル受けて二人仲良く倒れた。
女一人の突進に男二人吹っ飛ばされるとかなかなかお目にかかれんな......そんなん見慣れたくねーが。
「ご飯食べましょうか」
いつもの阿鼻叫喚に松永が冷静に対応して台所から飯運ぶ。
「お前らも手伝えやゴルァ!!」
リビングで暴れまくっとるモリクミと吉野と奥田、んで姉貴の横でデレっとる鎌やんの首根っこ捕まえて手伝わせた。
最近はこいつらから食費を徴収しよる。こげん毎日家来てタダ飯とかアホか。あいつらも「すんません」って材料費みんなで折半になった。今までの俺ら優しすぎ。折半になったけどあいつらが余計に金渡して来るんよね。ありがたく頂いとく!!お前らの大学時代からのタタ飯回数と飯作る松永の労力考えたら全然足りんわ!!
飯食ってる時は割りと静かやね。
食うのに忙しいんやけども。
こいつら、って俺とモリクミと吉野なんやけど飯食うの早いし大量に食う。
がっつく、って表現ぴったりの食い方やね。
ほら、犬に餌あげる動画とかあるやん?あれと同じ。「待て」からの「よし」で一斉にがっつく感じ。
外ではそげん食べ方せんけど家やと本性出るね。
最初の頃奥田がこの食事風景にどんびきしてたけど慣れたのか飯食う早さも量も俺たちに似て来た。
松永がニコニコしながら「おいしい?」って俺に聞いた。
俺ウンウンっうなずいた。
俺の食べ方が大好きって松永が前言ったことある。
家やと俺口の中のを飲み込んでから次の飯口に入れるって感じやなくて口にまだ飯あっても次々放りこんでほっぺふくらせまくってモグモグしよるんやけどその姿が大好きなんやと。癒される言っとったけどそれ犬とかネコに対するような感じやないんか?まぁ愛してくれてるんならなんでもいいか。
「そう言えば。私もんじゃ食べたことないんよね」
「あーん!?お姉さまーん?福岡ないんですかーん?」
「あるのかなぁ?見たことない。食べたことないんよねー」
「じゃあ僕と二人で食べに行きましょうー」
「でさー。東京来てるからもんじゃ食べに行きたいけどどこがおいしいんだろー?」
鎌やんスルーされとるwwwww
「あーん!!お姉さまーん。もんじゃではお腹満たされないですーん!!」
モリクミ、それお前だけな。
「じゃあ明日仕事終わったらどこかで待ち合わせて食べに行きましょうか。もんじゃって月島だよね?」
「そうですっ!!松永さん!!よかったら俺が手配しときましょうか!?」
「いいの?」
「はい!!」
さすがお坊ちゃまエリートの奥田。
いろいろコネがあるんやろーなー。
んで奥田がもっと人数いた方がいいです、とか訳分からんこと抜かした。
「なんで?」
「もったいないからです!!」
「へ?」
よー分からんけど人たくさん誘って下さい言うけん戸田、奈々子、津島のおっさん、緒方、松永の元上司近藤さんとその彼氏、佐伯さんと須田教授夫妻にも「もんじゃ食いたい?」って声かけてみた。
んで待ち合わせの場所勝どきに仕事終わって行ったら全員出席で時間通りに集まっとった。
「奥田、こんだけ人おるけど店に入れるん?予約しとるんやろ?」
「はい!!予約というか貸し切りなんで大丈夫ですっ!!」
「うぉ!?」
屋形船貸し切りしとった。
金持ちってやることがでけぇ.......。
いくらかかってるか知らんが屋形船にもんじゃの鉄板のついた大きな席あってそれみんなで囲んで食べるっていう。
「おいおいおいおい.......もんじゃ食うだけがえらいゴージャスになってね?」
「いくらしたの奥田君?僕たちも払うよ」
「大丈夫ですっ!!タダなんですっ!!」
「あーん!?タダですってー!?」
「奥田どういうこと?お金払ってるんやろ?」
「僕が言ったらタダでいいって言われましたっ!!よく知りませんがっ!!」
ど.どういうこと?誰が払ってるん?
どんな闇の力が働いてんの?エリート怖ぇ。
んで屋形船に乗って全員で飲み食いが始まるんやけど俺も松永も屋形船に乗るのが初めてでテンション高かった。福岡で柳川の川下りっていうのは二人でデートに行ったことあるけど東京で屋形船初めてやね。
松永がみんなを回って挨拶しよった。
初対面の顔もあるけん挨拶したり紹介したりしよったけどみんな楽しそうやったね。
ほぼ全員顔揃えるんは滅多にないけんいい機会やった。あ、俺の職場のゴリラ藤沢家族と向田のことすっかり忘れとったわ。書いてて気付いた。
姉貴も初めてのもんじゃと屋形船にご満悦やったし。
スカイツリー見えるとこ走ってて景色もよかった。
「AVで屋形船でエッチやりよるのネットで見たことあるなー」
「サイテー」
「そんなシチュエーションとか萌えるやろ?屋形船でエッチとか」
「長野サイテー」
「変態」
「ど変態」
「長野きっしょいわー」
「バカが」
「あーん!!ステキ」
「バカ弟がすいません。そこから落ちなさい」
「若いねーホッホッホ」
「長野さん!!すごいですね!!」
「残念なイケメン」
俺の声がでかかったんか今までワイワイ騒いでた連中が静まり返ってボロクソ言われた。
酒入って景色よくて飯もガンガン出て俺らテンション高かった。
そんなガヤってる連中から離れて松永が屋形船に寄りかかって海と景色見とった。
テンションが落ちてる。どうした?
「どした?船酔いした?」
「ううん。大丈夫」
横に座った。
「どした?」
「なんかね.......いいんかいなと思って」
「なんが?」
「こんなに幸せになっていいんやろか」
みんなが楽しそうにしてる中に松永がいて、急に昔松永の母ちゃんと松永の二人きりの静かな食事風景を思い出したんだと。ふいに寂しくなったんやろう。
松永の書いてる方の文章読むとさーあんま父親が出て来んっていうか母親と子供の関係ばっか書いてるような気もするんよねー。両親がどっちもおるっていうんじゃなくて片親やったりとかね。想像がつかんから書けんのやろうけど。
「寂しいん?」
「寂しくないよ。寂しくないけど悲しい」
なんかいろいろ思い出すこともあるんやろーね。
「お母さんもここにおったらよかった。お母さんに申し訳ない」
「どうして?」
「なんも親孝行せんうちに死なせてしまったけんね。死なせてしまったんは僕よ」
こればっかりは松永自身で背負い続けて行かないかんみたいで、何言っても駄目なんやろーねと思って「そっか」って短く返して二人で屋形船から見える景色見よった。
「ねぇ松永」
「うん?」
「お盆帰ったら俺の親に二人のこと言おう」
「どうして?」
「もういいやろ。ずっと隠して生きて行けんのは松永も分かっとるやろ?」
「うん........」
「大丈夫って。心配せんでいい」
手握って元気づけた。
「二人で歩いて行こうって決めたやん。いつかは決着つけないかんことやけんね」
「うん.......でも長野のお父さんとお母さんショック受けるよ」
「かもな、でもいいやん。それしか選択肢ないんやけん。納得してもらうしかない」
「優しくしてもらったのに裏切るみたいでこわい」
そのことでも悩んでるっぽい。
吉野には「幸せになるのに臆病」とか説教するくせに一番臆病なのは松永やと思う。
幸せになることに罪悪感感じてるんやろねーと一緒に生きて来て感じてた。
母ちゃん死なせたのが自分の言葉だったってずっと引っかかったまま取る気もない自分を許す気もないんは分かるけどさー........もう自分を許してもいいんやないかと思う。
「大丈夫よ、松永君安心しぃー」
姉貴がそばに来た。
聞いてたんか。
「お父さんもお母さんのこともそげん心配せんでよかよ。あん人たちなら最初驚くかもやけど受けれ入れちゃうって。私がそうやんwwww」
松永がうつむいとった。
ずっとこの話題でうつむかせて生きさせたくないけん俺は今年のお盆でケリをつけたいと思った。
いつまでもこんなことで悩ませてうつむかせとくわけにはいかん。
無駄な悩みがあるなら全部引きはがしていかないかん。それをするのは俺やと思う。
松永はもっと大きなもん抱えて生きとるし。
「姉貴ー」
「なん?」
「俺と松永のこと父ちゃんと母ちゃんが否定したら俺家捨てるけん。そん時ゃ俺のこと家族と思わんでー。俺松永選ぶわ。やけん前もって姉貴には言っとく」
「!?」
「分かった。好きにしー。そうならんと思うけどね。そうなったらあんた私たち捨てて松永君と生きりー」
松永が俺見てアワアワしとった。
「そういうことやけん。お盆よろしく。仕事入っとる言うとったけど帰ったその日の夜に言うけん姉貴も予定空けといてー」
「分かったー。楽しみにしとくわー」
俺と姉貴二人で話が勝手に進むのに松永が言葉が出ずアワアワしとった。
「ま.待って下さい!!」
「なん松永君?」
「待って下さい!!そ.そげんこと決めんで下さい!!そげんこと長野にさせれん!!」
泣きそうになっとる。
「松永君、こん子が言うんやけん。こん子一度言ったら聞かんけんね、松永君も知っとるやろう?大丈夫よーそうならんけん」
姉貴が笑いながら松永の肩ポンポンって叩いて頭撫でとった。
「大丈夫よ松永君。そげんこん子の家族のことで悪いなーとか考えんでよかとよ?言ってしまった方が楽になるけんね。やけんそんな泣かんでいいとよ?こん子が決めたんやけん」
俺の言葉と決意に松永が度肝抜かれて必死に止めさせようって、言うけどこればっかりは。
俺たちが揉めてるのに全員気付きおった。
「松永君どうしたの!?」
佐伯さんと奈々子が驚いて寄って来る。
松永がプルプル震えて絶句して言葉出せんくなっとった。
頭ん中できっと悪いことばっか思い浮かべとる。俺が父ちゃんと母ちゃんに理解されんで家族捨てる絵でも想像してしまってそうさせたのが自分だってまた悪いこと考えよる。
「なんもないよ。あーみんなにも言うとく」
俺立ち上がってみんな見た。
「俺お盆に家族にカミングアウトして松永と生きて行く言うけんさー。もし理解されんかったら家捨てるんよねー。よろしくー」
みんな呆気に取られてたけど、俺の演説で松永がうずくまってプルプル震えて泣いてる理由が分かったんやろう。いっつも松永が俺の家族のこと気にしとったし俺も「彼女はとか結婚とかうるせー」とか言いよったけんね。
「松永君、だ.大丈夫って!!」
「考え過ぎ考え過ぎ!!ね.ねぇ!?」
「そうそう!!ね?松永君だから戻って来てーっ!!」
「あーんっ!!松永くーんがあちら側に行って戻って来ないーっ!!」
「松永さーん!?松永さーんっ!!」
「ちょっと長野ー。急にそんな宣言されて松永君が困ってるじゃーん」
松永が拒絶発動して誰の声も届いてねーwwwww
頭ん中で悪いことばかり考えて届いてねー。
うずくまってる松永抱いて耳元で「大丈夫やけんね心配せんでいいけん」って何度もささやいた。
「モリクミィイイイイ!!お前盛り上げとけっ!!」
「あ.あーん!!了解ぃいいいい!!」
屋形船ん中がテンションだだ下がりな状態になったけんモリクミにお前なんかしろ!!ってけしかけといた。
モリクミダッシュでどっか行った。んですぐ戻って来た。
「おらぁあああああ!!屋形船プロレス始めるぞどりゃあああ!!」
「!?」
「ええっ!?」
「どうしてそうなる.......」
トイレで着替えて来たんやろう。
レオタード姿に金髪のヅラかぶっとった。
須田教授夫妻近藤さんと彼氏さんがどんびき。
そう言えばここら辺のグループモリクミの奇行を目の当たりにするの初めてか?
戸田奈々子、いつものメンバーは見慣れてるから慣れてるっつーか反応薄かった。
「またなんか始めたよこの人」
って顔で表情なくなっとった。
でも屋形船なんよね。屋根低いし揺れるしでモリクミが吉野と奥田に攻撃して暴れようとするのをいつものメンバーが必死に止めよった。
「あーんっ!!あいつを○らせてっ!!東京湾に落とさせてっ!!」
「モリクミさん船揺れるから!!私たちも落っこちる!!」
「モリクミー暴れたら船揺れる―。やーめーてー」
「.......松永君が吐きそう」
うずくまってた松永が今度は船のひどい揺れで違うことでうずくまっとった。船酔いしとる。
「おぃいいいい!!モリクミてめぇええええ!!松永が弱ってんじゃねーかっ!!」
「はいーっ!?あーん!?あたしーっ!?盛り上げろと言うものですからーんっ!!」
「違う方向に努力してんじゃねーっ!!松永の口からもんじゃが出て来るだろうがーっ!!松永大丈夫?」
「うるさい.......」
「もんじゃ食べて口からもんじゃとかwwwwww」
「ダレウマwwwww」
「誰がうまいこと言えとwwww」
吐きそうな松永からは睨まれ周囲のやつらはなんがおかしいんか大爆笑。
気持ち悪くなってトイレに掛け込んだ松永が青ざめた顔で出て来て横になった。
「帰りでよかった」
あともうちょっとで到着やけんほんとよかった。
まぁドツボにはまって拒絶始めた松永が気分悪くなってそれどころじゃなくなって元に戻ったのはよかったのかな?
少しの揺れでも「ウウッ」ってうなってぐったりしとった。車運転してる時は車酔いとかないらしいけど助手席に座っとる時は酔ったりしよったけんなぁ。
「モリクミお前ぇ.......」
「あーん!!松永くーんっ!!」
「レオタードからはよ着替えろ!!上陸するやん!!」
レオタードで正座させて静かにさせてたモリクミに着替えに行かせる時足がしびれてたんやろーね。盛大にこけおって船が大揺れした。
「てんめぇえええええ!!」
「やーんっ!?違うのぉおおおお!!この船が悪いのーっ!!このナイスバディがっ!!ナイスバディの魅力に耐えきれないこの船が悪いのーっ!!」
女性陣が松永のそばでおしぼり額に当てたりなんやかんやと世話しよった。
「一度船酔いしちゃうと降りるまできついわよねぇ。もう少しよ松永君」
「すいません.......」
「チョコを一口だけ食べてちょうだいね。血糖値を上げましょう。目を閉じて周囲を見ちゃ駄目よ」
須田教授の奥さんが松永に助言しながら酔いに効くっていうツボとか押してあげよった。
船降りる時に津島のおっさんがタクシーチケットを全員に配った。
「皆酒で酔ってるだろうと思ってね。タクシーは港に呼んであるから皆さんこれでお帰り下さい」
「うぉおおおお!?いいん?」
「いいよ。接待費でどうにか落すから」
おい。それいいんかい。
みんなそれぞれタクシーに乗って帰った。俺と松永と姉貴は松永の酔いが覚めるまで港で待っとったけど姉貴が気遣って「私先に帰っとくから鍵貸して」って俺たち二人きりにして帰った。
「大丈夫か?」
「うん。落ち着いて来た」
岸壁に座って松永膝枕してしばらくぽけーっとしとった。
人は誰もおらんかった。
「寒くない?」
「大丈夫。海の匂い強いね」
「そうやね。海綺麗やないな」
「福岡の海もそげん綺麗じゃない記憶あるけど匂いはどこも同じなんやね」
松永の髪の毛触って頬をナデナデした。
「松永。いつか親に言わんといけんとって。お前想像出来る?俺たちが別れて別々に暮らしてるの。俺想像出来んよ」
「.........僕も出来ん」
「そうやろ?やけん早めにケリつけないかんよ。先延ばししてもいつかは言わないかんしバレルんやけん」
「うん......」
「不安?」
「うん」
「大丈夫って。うまくいくいく。俺の家族やし俺とながーく生きて来たけん分かるやろ?俺の家族やけん同じって。姉貴なんか松永にベタベタしとるやん」
「もし長野のお父さんとお母さんが許さんかったら別れよう」
「別れんよ。俺が許さん。お前二度とそんなこと言うなよ?もう恋人同士やないんぞ?結婚式挙げて一緒に生活してお前俺の家族やろ!!簡単に別れるとか言うな!!そげんこと許さんけんな」
本気で俺がイラッて怒っとうのに気付いて松永が黙った。
「心配せんでいい。なんとかなるし、そうする。やけんそげんこと思わんで。前みたいに急にいなくなるとか余計なこと考えたりもすんなよ」
キスしようとしたけど膝枕してる松永の顔まで届かねえwwww
膝に松永の頭乗せてただ前かがみになって顔近付けただけになった。
そげんださい形になった俺の顔見て松永が頭起こして俺の顔に顔近付けて手で俺の頬挟んでキスしてくれた。少し長めのキスしてから松永から口離した。
「分かったよ。やけど家族捨てるとかそげん言うのやめて」
「大丈夫って。そうならん。最初は驚くかもやけど歓迎されるに決まっとる」
「だといいけど。もう大丈夫帰ろう」
「わーった」
タクシー呼び直してもらったチケットで家まで帰った。
仕事終わって直行したけん、まずはスーツ脱ぐ。
リビングに姉貴おるけん松永の部屋で二人でスーツ脱いだ。
お互いのシャツのボタン外し合いしよったらムラムラしたけどその日は我慢した。
一番好きなのはネクタイ締めてもらう時と外してもらう時かな。夫婦なんやねーって一番思える瞬間やね。
やけん会社終わってもネクタイ外さんで帰ってから松永に「んー」って顔上に上げて首見せてネクタイ外してくれって催促することがよくある。「自分でやれ!!」って言われることもあるけどね。
部屋着に着替えてリビング行くと姉貴が軽めの物作っとった。
「松永君吐いてしまったけん胃袋空っぽやろ?軽めの物作っとうけんお腹空いてたら食べりー」
「ありがとうございます」
「よかよ。バカも私も世話なっとるけんね」
バカって俺のこと?
松永が蓮華で姉貴の作った物食べよったけど上手そうやったけん俺も松永に「あーん」してもらう。
二人でそうやって交互に食べ合ってたら
「二人そげんことしとるの見ても嫌な気がせんね。カップルでそげんことしてたらバリイラッてするけど」
「ブサイクやったら姉貴そう思わんやろー?俺らがイケメンでラブラブやけんやろ?」
「悔しいけど認めるわ、あんた見た目だけイケメンやし。イケメン同士でそれされちゃうと見た女の子は誰も割って入ろうと思わんよ」
「普段も見せれたらいいんやけどねー」
「無理」
「やけん女からバリもててしまうとって。松永っていう伴侶おる言えたらんーなめんどくせーことに関わらんで済むんやけどね。松永もそうやね」
「かもね。でもそれでもいいよ」
「なんで?めんどくせーやろーもん」
「家に帰れば長野おるし。家に帰ってくればそんなんないし」
松永が差しだす蓮華にかぶりついてニカッて笑った。
正直バリ嬉しかったんやけどね。
俺もそうだからかな。
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