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パパとお父様①
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ようやくこの日が来た!
「カノル様完全復活だぜ。」
部屋で使用人の制服をびしっと決めて、ドストミウルにドヤ顔でピースサインを向けてやる。
「うむ、君にしてはよく耐えた。」
「まるで俺が堪え性が無いみたいじゃん、腹立つ言い方。」
まあ、実際何度も部屋から抜け出してやろうかと考えたがドストミウルとヂャパスの目が光り続けていたせいでそれは実現できずに終わった。
そこまで長期間では無かったし、暇ではあったけどゆっくり体を休められたしいい期間だったのかもしれない。
「じゃあ、いつも通り仕事に行ってきます。」
「その前に彼女に会うといい。」
ドストミウルはそう言うと部屋の入口の扉を指さした。
「今日も君に会いたくてそこで待っているだろう。」
カノルはハッとしてから扉の方を向いた。
扉の前で待機していたヂャパスは、待っていたようにゆっくりと扉を開いた。
大きく開かれた扉の向こうで、少女は小さく立っていた。
少女もまたこの扉が開かれるのをずっと心待ちにしていたのだ。
「ビアリー...」
カノルはビアリーを見つけるとゆっくりと部屋を出て、少女の前に座り視線を合わせた。
ビアリーはカノルを見て今にも泣き出しそうな顔をした。
「カノルちゃん体が治って良かったわね。ビアリーちゃん今とってもカノルちゃんに謝っているわ、ごめんね、ごめんねって。」
ビアリーに付き添っていたバーバラが優しい声でそう教えてくれた。
「なんだよ、謝らなくったっていいのに。もうちっとも痛くないし、俺は気にしてないって!俺はビアリーが元気そうで本当に安心したよ。ドストミウルとも和解出来たみたいだし、これで本当に仲間入りできたしな。」
そう言って頭を撫でてやるとビアリーは余計に表情を崩したように見えた。
「今度はありがとうだって。」
バーバラがそう教えてくれると、俺はビアリーをそっと抱きしめた。ビアリーも俺の首元に手を回してぎゅっとしてくれた。
背中を数回撫でてやってから体を離した。
「てかビアリー、俺が買ってきた服着てくれたんだな!すげえ似合ってるぜ!」
ビアリーは紫色の生地に、裾と袖には白いフリル、胸元に金の刺繍の入った真新しいドレスを着ていた。
そしてカノルの言葉を聞いて照れくさそうに笑った。
「髪飾りもいい感じだし、やっぱ女の子って可愛いよな~」
「むっ、君は幼い少女に興味があったのか!?」
ドストミウルが驚きながらそう言うと、バーバラが笑った。
「嫌ですよ旦那様。カノルちゃんは父親みたいな目線でそう言ってるんですよ。出会った時からずっとそうでしょう?」
「父親ってな...俺まだそんな歳じゃないんですけど。」
ビアリーは微笑みながらカノルを見つめていた。
「ほら、ビアリーちゃんもカノルちゃんがパパだったら嬉しいって言ってるわよ。」
「なっ、冗談だろ。ビアリー本当に言ってる?」
カノルはビアリーに問いかけると、照れながらビアリーは頷いた。
兄と呼ばれるのには慣れているが、父と呼ばれるのは初めてだしどう反応していいのか分からない。まあでも、嬉しくない訳は無かった。
「カノルちゃん、どうせならビアリーちゃんのパパになってあげたらどう?」
「パパって...俺にそんな責任果たせるかな。」
嬉しさを感じながら悩んでいるとドストミウルが近づいてきた。
「責任も何もアンデッドは成長しない。あくまで呼び方の問題であろう。」
「じゃあ旦那様もパパかしら?でも、パパって言うよりはお父様って感じよね。」
バーバラが呑気に首を傾げるとドストミウルは少し驚いて俺の方を見た。
ビアリーも少しびっくりしてドストミウルの方を恐る恐る見ていた。
「我々の...娘か...」
「気色悪いからまじまじとこっち見ないでくれる?」
カノルが不機嫌そうにドストミウルを睨むと、ドストミウルは目を逸らした。
「ビアリーが俺の事父親みたいに思ってくれるなら俺は嬉しいよ。じゃあ俺も父親らしく期待に答えなきゃだな!」
カノルが再びビアリーの頭を撫でると、ビアリーはとても嬉しそうに笑った。
「ドストミウルをどう呼ぶかの判断はビアリーに任せるけど...コイツに親らしいこと出来んのかな。」
カノルはなんだか少し浮かれ気味のお父様候補を横目で心配そうに見ていた。
「まあ何はともあれ、これからよろしくなビアリー。 」
カノルがそう笑いかけると、ビアリーも綺麗な笑顔で返してくれた。
きっと「よろしくね、パパ。」と言ってくれているのだと、言葉は聞こえずとも伝わってきた。
なんだか照れくさいけれど、この新しい出会いを大切にしていこうとカノルは思った。
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