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パパとお父様②
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その日から私はカノルをパパと呼ぶことにした。
私はあの日全てを思い出し、自分にひどい父親がいた事もちゃんと覚えている。それでも、私に優しくしてくれたあの人の近くに居たいし、親密な仲でいたい。
パパと呼ぶのは私の我儘だし、無理に親らしいことをして欲しい訳じゃない。ただ、あの日にかけてしまった傷と迷惑を忘れないためにもあの人の近くにいたいと思った。
「おはよう、ビアリー!」
日が暮れるとパパは私に会いに来てくれる。
あんな事があったけれど、私は昼間バーバラおばあちゃんの部屋で休ませてもらっている。
そんな寝起きの私のところへ来て毎日髪を結ってくれるようになった。
今日は綺麗に二つの三つ編みを作ってくれると、私の選んだ髪飾りを付けてくれた。
「今日も完璧にかわいいなビアリーは、じゃあ俺は仕事に行ってくるからいい子にしてるんだぞ。」
ぽんと優しく頭を叩いてからパパは行ってしまった。
パパの後ろ姿に手を振ってから、私は今日やるべき事のために立ち上がる。
「あら、ビアリーちゃんもどこかお出かけ?」
おばあちゃんにそう言われて私は力強く頷いた。
私は大きな扉の前にいた。
ここは皆が旦那様と呼ぶ、ドストミウル様の部屋の前。パパの部屋でもあるけどドストミウル様の部屋だから、そう簡単には入らせて貰えない。
私はそんな部屋の扉を勇気をだしてノックする。
コツコツと小さく音を立てると、ドアを開けたのは執事のおじいちゃんだった。
「ビアリーか、なんの用だ。」
『どっ、ドストミウル様と、お話がしたいの...です。』
緊張しきってしまった私は、震える唇のままそう伝達を飛ばす。
「入れなさいヂャパス。」
中からドストミウル様の声がして、執事のおじいちゃんは私を招き入れてくれた。
ドストミウル様は大きな机の所にいた。
私が目の前に近づくとゆっくりとこちらを見た。
『あのっ...お話がしたくて。』
「良いだろう、話しなさい。」
ドストミウル様と視線が合うと、 私はさらに緊張して頭が真っ白になってしまった。
私が来てすぐに問題を起こしてしまって、ドストミウル様が私の事を良く思ってないのは知っていたし、とっても怒っていたのも知ってる。
私は消されても当然の事をしたのだから、ドストミウル様に口答えなんて出来ない。でも、それでも、どうしてもこの話をしなくてはいけないのだ。
私は勇気を振り絞って言葉を出した。
『お父様って呼んでもいいですか!』
ドストミウル様は何も言わずにじっと私の方を見つめていた。
『あのっ、この前の時ちゃんと話せなかったから、私ちゃんと聞きたくて。パパはドストミウル様とケッコンしてるって聞いたから、やっぱりパパだけパパって言うのは変なのかなって思ったりして...。いっ、嫌だったらしません!』
ビアリーは焦りながらそう言い切った。
ドストミウルは考えるように視線を落とした。
「正直な所、私は君をまだ完全に信用出来てはいない。来て間もないし、問題も起こしている。そんな君にカノルのついでのように父親扱いされるのは心外だ。」
ビアリーは体を震わせてうつむいた。
「しかし...カノルは君を信用しているし、父親として慕われることをとても喜んでいる。ここで私だけが君を毛嫌いし続ける訳にも行かないだろう。」
ビアリーは少し目を大きく開けてドストミウルを見た。
「私を父と呼ぶことは許可しよう。ただし、そう君が決断したからにはそれなりの覚悟を見せてもらいたい。」
『かくご?』
「そうだ。私の娘になりたいと言うなら、アンデッド族の王の娘としての教養を身につけてもらわなくては困る。ただの無能なアンデッドで居られては困るのだよ。...皮肉にもこの間の事で分かったが、君は自らアンデッドとしての位を上げられる素質は持ち合わせている、努力を重ねればそれなりに強い力を持てるはずだ。」
『私が強くなれる?』
「私は君にその覚悟があるかを聞きたいのだ。私の...私達の娘となるなら強くなる為の努力を惜しまない覚悟があるか、とね。」
ビアリーは握りこぶしを作ってから強く頷いた。
『私がんばります!パパとお父様の為に強くなるし、お勉強だってします!』
ドストミウルはその瞳を見てゆっくりと頷いた。
「いいだろう。ビアリー、君は今日から私とカノルの娘を名乗るといい。私の手が空く時は直々に私の教育を受けてもらう、だが弱音のひとつでも吐けば私は君を娘とは認めない。よいな?」
『はいっ!お父様!』
私は覚悟を決めてドストミウル様を見つめた。
それが私の償いになるなら、パパのためになるなら私はいくらだって強くなろう。ドストミウル様は恐いし厳しいかもしれないけど私が強くなればきっとパパも喜んでくれるはず。
こうして私はアンデッドの王の娘となったのだ。
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