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醜態を晒せ!②
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こんなの拷問だ、いじめだ、嫌がらせだ!
ただの趣味程度のおふざけをまるで一つのイベントのように組み込みやがって!覚えておけ、くそアンデッド共め!いつか必ずひどい目に遭わせてやる!特に前でほくそ笑んでいたゴルゴアとベトルイーナだ!
「まあまあ!カノルちゃん、とっても似合うわ!ビアリーちゃんも喜んでるわよ、パパとっても似合うし素敵って!」
バーバラの部屋で着替えを済ませたカノルに一番によってきたのはビアリーだった。
「パパとお揃いのメイド服来て私もお仕事お手伝いしたい!ですって、まあーそれはとっても楽しそうね。」
ビアリーは目を輝かせてカノルを見つめていた。
俺は思った。
…ああそうだ、ビアリーのメイド服を注文しよう。
「結構似合うねカノル。遠目で見たら女の子に見えるよ、そのがに股と猫背と肩いからせるのやめればね。」
ダティアリアは普段話の温度でふふっと笑った。
一方カノルは非常に不機嫌だった。
動きづらいし、股下はすーすーして落ち着かないし、頭にはなんの意味も見出だせないひらひらがあるし、いっそ脱ぎ捨ててパンいちで仕事をやっていた方がましなんじゃないだろうかとさえ思った。
「ざけんなよ、こんなんの何が面白いわけ?」
「ブトハとガルイヤは爆笑してたじゃん。ゴルゴアとベトルイーナは古いカメラ持ち出して凄い勢いで撮ってたし。ビアリーも嬉しそうだった。」
「うーん」
カノルは考え込んだ。
この訳の分からん憤りをビアリーの笑顔で相殺出来るだろうか。出来ないことはないがそれで済ませてはいけない気がする、なんとも微妙な天秤だ。
まあ、こうなってしまった以上なんとかやり過ごすしかないのだろう。とりあえず面倒な反応をするやつらにはなるべく会いたくはない。
そうカノルが思った瞬間、すぐ後ろから何かを落とした大きな音が聞こえた。
「かっ、カノル!?何て格好をしているのだ。なんだ、その、とても破廉恥であるな。」
何故かとても動揺した様子で抱えていた大きな箱を落としたのは人の姿をしたゲイルだった。
「俺への罰ゲームなんだと。つか、これで破廉恥ならベトルイーナのやつは露出狂か?どうせなら阿保らしいと笑ってくれよ。」
「う、うむ、そうだなそれは失礼した。」
そそくさと立ち去ろうとするゲイルにカノルは言い忘れを思い出した。
「あ、お前ドストミルウルのとこ行くんだろ、絶対に言うなよ俺のこの格好の事。200%超で絶対に面倒くさくなるから。」
「旦那様は知ってるらしいよ、カノルがその格好するって事。」
会話に補足をつけたのはアリアだ。
「え?そうなの?知ってて何もしてこないだと…」
「執事長から聞いたけど、そんなカノルを見たら自制心が保てなくなって仕事の邪魔をしてしまうから我慢しよう、とおっしゃってたとかおっしゃってなかったとか…」
「おっしゃってたな、絶対。」
落とした箱を抱え直しながらゲイルも頷いていた。
仕事は滞りなく終了した。
もちろんサボってなんかいない。むしろ、お化け屋敷何て言われないくらい綺麗にしてやったくらいだ。本当はやりすぎはよくないんだけどね。
「羞恥心に耐えよく頑張った。これからもその働きを忘れるでないぞカノル!」
「はい」
執事長の声はやはり身が締まる。俺も珍しくかっちりした返事をすると、今日のお馬鹿イベントは終了した。
俺は忌まわしいメイド服を脱ぎ捨て、溜め息をつきながら部屋へと戻った。
「ご苦労だったなカノル、今日は大変だったようだ。」
部屋に足を踏み入れるなり仕事机にいたドストミルウルに話しかけられた。
「大変ってか、面倒なだけ。ペナルティとか罰何て言うけど、俺の事馬鹿にしたいだけだよ。ま、元はと言えば俺が悪いんだけどさ。」
「自覚はあるのだね。」
「まあね。」
飲み物でも飲もうと保存庫を開ける。なかをしばらく物色していると背後に気配を感じた。
「んだよ。」
振り向くと案の定ドストミルウルがいた。
なんだか少し機嫌の良い王サマは、その手に何かを持っていた。
がさごそと鳴る、見覚えのある紙袋。
「私にもじっくり見せてもらえないかと」
カノルは勢いよくその袋を蹴り飛ばし、袋は弧を描いて飛んだ後に部屋の隅へと落ちた。
「ざっけんな!大人しいと思ってたらこれか!この変態お化け!」
「私も頑張って自重したのだ。どうしたものか迷ったのだかやはり私だけ見られないのは不公平だ。」
「見る側に公平も不公平もねえんだよ!」
その時ガタリと部屋のドアが開いた。
そーっと覗きながら入ってきたビアリーはカノルとドストミルウルをゆっくり交互に見た。
「またケンカしていたのかと娘に呆れられているぞ。」
「誰のせいだ馬鹿野郎!あんな服二度と着ないからな!」
尚もカノルとドストミルウルの言い合いは続いていた。
ビアリーは足元に落ちていた紙袋を発見した。
カノルがいい加減に話を打ち切ってさっさとふて寝してやろうと思った時、服の裾を引っ張られた。
視線をやるとそこには愛娘があの袋をもって嬉しそうに微笑んでいる。
「直訳しよう…パパ、もう一回着て見せて、お願い。」
「マジデイッテマスカ?」
苦笑いを浮かべながらカノルがビアリーの顔を見ると、少女は真剣な顔で何度も頷いた。
「娘の頼みを無下には出来まい。」
「急に都合のいい言い出したぞ、まじでなんだこいつ。…なぁ、ビアリーまた今度じゃダメか?俺これ嫌なんだよ。」
「『お父様も見たがってるし、ビアリーもみたいの、少しで良いから、ね!』直訳だ。ふむ…なんと親思いな娘だ!私のためにもと頼み込んでいるのか。…カノル。」
「いやいやいやいや…」
「今着てくれればこの服はすぐに処分しよう。それとも今後に渡って長く残しておくつもりかな?」
「いやいや…」
ビアリーは尚も期待の眼差しでこちらを見ていた。
こんなのは茶番劇だ。
そして、言っておこう俺の娘を愛する気持ちは無限大である、と。
「うむ、なるほど。」
不機嫌を濃縮したような表情したままスカートをひらつかせる愛しい人をドストミルウルはまじまじと見つめていた。
「あと何秒?」
「まだダメだ、もう少し拝ませてくれ。」
拝まれることが多そうなやつにそうまで言われるとは思わなかった。それこそ舐め回すような視線をむけられて、恥ずかしさはあるものの嫌ではなかった。
ビアリーは喜んで少し跳ねながら俺の手をしっかりと握っていた。
「おもしろい?」
少し口元を歪ませてカノルはビアリーに声をかけた。
「『かわいい』のだそうだ。私もそう思う。」
同意見でも絶対に意味が違う。どう考えてもドストミウルのその言葉には下心がついている。
ビアリーはしばらくカノルの周りをうろうろしていたかと思うと、立ち止まって大きなあくびをした。眠そうに目をこすってからドストミウルとカノルを交互に見て小さく手をふった。
「眠いの?まだ少し早いけど。」
ビアリーはこくこくと頷く。
「君のいつもと違う姿に興奮して疲れが出たのだろう。今日は休みなさい、ビアリー。」
ドストミウルはビアリーに近寄ると軽く頭を撫でた。カノルもゆっくりと寄ってから手を伸ばしてきたビアリーを優しく抱きしめる。
「ビアリーのメイド服オーダーしていい?」
「いいだろう。」
「よしっ、おやすみビアリー。」
ビアリーはカノルのうでの中から離れると自室のドアの向こうへ入っていった。
「はい、メイドさんお終いね。」
「もう少し…」
「じゃかあしい!! 」
大きな声をドストミウルに向けると、カノルは高速で服の袖から手を抜き、脱げた服を丸めて床に叩きつけた。
もったいないとでもいうように、ドストミウルはいそいそとそれを拾って綺麗にたたみ始めた。
「約束だからな、ちゃんと焼却してくれよ。」
カノルは下着一枚のまま腕を組んでドストミウルを睨み付けた。端を揃えて丁寧にたたんだ服をドストミウルは元の紙袋に入れた。
「仕方あるまい、約束は約束だ。」
「とーぜん。」
カノルは誇らしげに勝者の笑みを浮かべた。
そんなカノルの顔をドストミウルはしばらくじーっと見つめていた。
「なっ、なんだよ。」
「いいや、君はわざわざこんな飾りの服を着なくても十分かわいいと思ってね。」
カノルはハッとして、急いで自分の服を着始めた。
「変態!えっち!セクハラ骸骨!」
カノルはそう叫びながら高速で服を着替え終えた。
「今後はこんな事は禁じよう。」
「くだらないしね。」
衣服を整えるカノルの傍らに回り込み肩を抱くよう細長い指をまわす。
「いいや、君が他のものにそういった姿をさらすのは実に面白くない。」
「ずいぶんな独占欲で…」
カノルがわざとらしく広角を上げながら呆れたようにため息をつく。
冷たい口枷をその耳に寄せながらドストミウルはそっと呟いた。
「君の羞恥が晒されるのは、私の腕のなかだけで十分だよ。」
ドストミウルは満足そうに喉の奥を鳴らした。
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