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「…じゃあ、今日わざわざ集まる必要もなく、みんなここに来たわけだ??」
佐藤は貝の如く押し黙っている。何だか空気を読んだ方がいい気がして、俺達も佐藤に倣った。
三人を見まわして、不機嫌真っ最中らしき種田はふんと高飛車に鼻を鳴らす。
「…なら、タケトの言う通り、後日SNSか何かで連絡とりあって日程決めよう。俺はバイトで忙しいから、不参加かもしんないけど。…じゃあね。」
言うだけ言って、カンジ悪ぅ~い種田がその場を後にする。種田の背中を、反射かと目を疑う速度で佐藤が追いかけていった。
「…えっ。俺、まずいこと言った??」
思わず、隣席の幼馴染に確かめる。すると、ヒビキは俺の肩に自分の頭をこてんと乗せて、一言。
「…放っておけばいいよ。ここから先は、佐藤と種田の問題デショ。」
肯定も否定もしないヒビキの優しいんだか察知して欲しいんだかよくわからない感想に、俺は深々と項垂れた。
「…まずいこと言ったんだな、俺。」
「まあまあ。今日のたっちゃんも、そういうところがかわいくて俺は満足。」
ポンポンと頭を撫でられるが、これでもかというほど嬉しくない。
「お前を満足させるために、俺は世の中の空気を読んでいるわけじゃない。」
物悲しさに、俺は目元を手で覆わずにはいられなかった。
おかしいな、何故世の中というのは整合性のある発言をすると逆に空気読めないとか批判されるんだろうな…??正論振り回していると、ちょっとのっぽな他人にぶち当たるんだろうか…。
「とにかく、佐藤も種田も行っちゃったし。家、帰ろう。スケジュール調整は、後で連絡くるっしょ。」
ヒビキが椅子から立ち上がる。俺も奴の後を追いかけて、大学の建物を後にする。
建物を出た途端、眩いばかりの太陽光が目に飛び込んでくる。あまりの眩しさに片手を眉の辺りに押し当てて、目元に影を作って顔を上げると、真っ直ぐに伸びた木々が視界を掠める。色鮮やかな新緑の葉が、乾いた風に煽られてさらさらさらさらと微かな葉擦れの音をたてて靡いている。
アスファルトの上。空気はムッと暑く、セミは狂ったように鳴き喚いている。俺は柄にもなく夏だな、と目を細めた…直後だった。
「あ~っ、タケトさんっ‼」
二度と聞きたくなかった爽やかな声が響いて、ギギギ…と潤滑とはほぼ遠い動きで顔を移すと、そこには…あの、棗がいた。
棗はもちろん、バイトの制服姿ではなく学生服を着ており、声を聞かなければ誰か判別がつかなかっただろう。パッと見の好青年具合に磨きがかかっている。…棗が腕に抱えているのは、数冊の冊子。何故ここに、と俺が目を白黒させていると相手は駆け寄ってくる。
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