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男なんです。
菓子折り引っ提げてこようが、清潔感溢れるワイシャツだろうが、どれだけ礼儀正しかろうが。
そりゃ男連れてきたら大概の家はこうなるわ。
重苦しい沈黙。
權さんだけが、優雅に紅茶を楽しんでいる。
「……………………ねえ、まあ。あの、………そちらもお仕事大変でしょう」
綺麗な母親が、俺を見てはパッと目をそらす。
「え、まあ。はい。それなりに、…………………………」
「……………………」
「……………………」
「………………………あ、………でもほら、權さんとはお話が合うんじゃないかしら? ねえ、どうかしら」
「あー……はい、まあ、その、…………そうですね。わりと」
「ねえ」
「はい」
「……………………………………」
「………………………………………」
「………………………………………………………………」
だ、誰か助けろ。
權さんを横目で盗み見るけど、いつものごとく、ぼんやり空気だ。ああ、俺も存在感を消せたらいいのに。
父親はめちゃくちゃ怖い。いかにもな容姿だ。恰幅のいい身体を上等な着物に包んで、カイゼル髭、高級な杖。
眼光鋭く、息子を睨み続けている。
事前に權さんと話しておけばよかった。ご両親がどんな人たちか。どんな関係性か。こんなに仲が悪いなんて聞いてないぞ。………仲良しとも聞いてないが。
心臓が破裂して死にそうだ。
「じゃ、僕ら帰るね」
あっさり言いはなって、權さんは立ち上がる。
「行こっか」
営業スマイルで、俺に手を差し出す。こっちは藁をもつかむ勢いだ。
「え、やだ……まだ来たばかりじゃない」
「顔見せるだけって言ったでしょ。もう話すこともないみたいだし、充分じゃない?」
「……………」
どうすれば正しいのかわからない。非常識。でも、俺が何かしてでしゃばる空気でもない。
ろくな会話も出来ないまま、その家を飛び出した。
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