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「………………………好きですよ」
喉が乾く。頭が痛い。
指先から血の気が引く感覚。
「知ってる」
「………………いつから」
「…………あれだけ露骨にされちゃね」
「いつから?」
つい声が尖る。だって。
「…………………」
「いつからわかってたんすか。つか、だったら酷いよあんた。なんで、」
「や、まあ。あの、うん、ごめん」
「謝んなムカつく。俺がどんな気持ちで今まで、」
「や、まあ。まあ。あの、宇多島くん。あの」
まあまあ、となだめてる權さんは完全に他人行儀で、そりゃ人は少ないとはいえ、ホームには大勢いる。視線を感じて、俺は怒りを堪えて溜め息をついた。くそ。わずらわしい。
「……ちゃんと気付いたのは昨日だけど」
「昨晩?」
「………………うん。……」
「いや気付くのおっそ………」
「………まさかとは思うじゃん。普通」
「…………………………」
「……………ごめんね」
「謝んな、ムカつく」
「………………………まあ、そういうことだから」
「え、嫌です」
「えぇ……」
「俺……………………………要らないですか」
「良き友人でいましょう」
「無理」
「…………電車来たよ」
「今無理っす」
「……………………」
ざわつくホーム。うつむいて目をつぶる。ざわめき。複数の足音。重たい鞄をしょい直す。ハイヒール。ジャラジャラと金属の鳴る音。駅の放送アナウンス。子供の笑い声。
扉の閉まる音。
「………………………………………」
「………………………………………」
今は泣くな。
泣いていい場面じゃない。
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