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〜空夜side〜
全曲目が終わって、いよいよ表彰。
緊張しまくりの空夜の隣には昴流と兼が座っている。
「大丈夫だって、そんな顔面蒼白にならなくても。」
「いや……まあ、ほんとに、すごくよかったから、悔いは全くないんだけど、やっぱ、緊張してきたっていうか。」
「くうちゃん顔やば!大丈夫だから落ち着けって!」
「どうしたどうした。」
後ろに座っていた宏樹と俊哉も心配そうに覗き込んでくる。
「くうちゃんが緊張しすぎて顔死んでる。」
「「うわ。」」
振り返った空夜を見た2人は同時に声を上げた。
「大丈夫だってー!ここまで頑張ってきたじゃん。」
「そうそう、空夜と昴流はよく頑張ってくれてたし、俺たちだって悔いないし。」
「2人ともありがとう……」
「くーちゃん平気かー?!」
兼の隣の席の光樹がトイレから戻ってきてそう言う。
やたら声がでかいが、今の空夜はそれに突っ込むだけの余裕はない。
「せとっち声でけぇ!」
代わりに突っ込んだ兼も声がでかいので意味がない。
「2人とも、赤津くんの心配はいいけど、もう少し声抑えようね。」
「ったく、だいたいかしけんは注意する側だろうが。」
お母さんのように京が嗜め、昴流が呆れて付け加える。
少しだけドキドキが収まったところで、ブー、とブザーが鳴った。
この学校の合唱コンクールの受賞発表は、自由曲のイントロを音楽の先生がピアノで弾くことで示される。
1年生から順に3位からの発表だ。
2年生の中で青鷺を選択したクラスはもう1クラスあり、イントロが流れたとしてもどちらかわからない。放送部のアナウンスによってやっとわかるのだ。
1年生の発表が始まり、曲のイントロが流れたクラスは歓声を上げる。
少しずつ近づいてくる感じに、また鼓動が早くなった。
「続いて、2学年の発表に移ります。2学年、第3位銅賞は……」
シン、と静まりかえるホール。
流れたイントロはH組が歌った「走る川」。
「H組です!」
後ろから歓声が上がる。
「2学年、第2位銀賞は……」
(青鷺だ。)
何度も聞いた、繰り返し練習した曲。
1音目でわかった。
「B組です!」
うわぁぁ!と周りから声が上がる。
空夜はぽかんとしてしまった。
「やったぞ空夜!」
「やったねくうちゃん!!」
隣の昴流と兼から手を掴まれ、うん、と答えるのが精一杯だった。
「2学年、第1位金賞は……」
自分のクラスより上、第1位の発表。
流れたイントロは、これまたよく聞いた曲だった。
「A組です!」
左側から大きな歓声が聞こえる。片割れの陸玖や幼馴染の新、一緒に練習した航の嬉しそうな顔が見えた。
「陸玖と新のクラスだな。」
「悔しいけど、2位だぜ!嬉しい!!」
発表の邪魔にならない程度の声で、昴流と兼がそう話す。
空夜としても、A組のあの歌なら、悔しさはあれど仕方ないと思えた。
自分たちのクラスも今までで1番良かったのだ。悔いはないし、2位は純粋に嬉しい。
3年生の歓声あり涙ありの発表も終わり、校長先生からや評価に来てくれた外部の方からの話があった後でコンクールは幕を閉じた。
この後は17時までは写真撮影などで残っていいことになっており、その後吹奏楽部などが楽器搬出や物品の搬出を行い18時にはホールから完全撤退だ。
クラスで写真も撮り終わった頃、宏樹、俊哉、京、兼、光樹、昴流、空夜の7人で喜びを噛み締め合い、京と兼が貰ってきたトロフィーと表彰状はクラスみんなに回し始めた。
「はー、よかったぁ。くーちゃんと昴流くんが頑張ってくれたおかげだね!合唱コン実行委員の2人もお疲れ様!!」
「いやいや。みんなが頑張ったからだよ。」
「だな。俺たちについてきてくれてありがと。」
「木之本が照れてる?!」
「うっせ。」
照れ隠しなのか、指摘してきた光樹をぎゅっぎゅっと締め付けて、光樹はギブギブ、と叫んでいる。
「かしけんと京くんもありがとね。ここまで俺と昴流が頑張って来られたのも2人のおかげだよ。」
「いやいや!俺はなんもしてない!いっつもきりちゃんに助けられてばっかで……でも、みんなで勝ち取ったって感じして、すげぇいいな!」
「そうだね。みんなが頑張ったから、だよね。」
「でも、来年こそ1位とりたいね!」
宏樹がそういうのに、他の皆も頷く。
「ねえねえ!ここの皆で打ち上げしない?クラスの打ち上げはあるけどさ、今日みんなでご飯食おうぜ!」
「あー、そんならうちの店くる?居酒屋だけど、父さんもいいって言うと思うし。」
そわそわしながら提案した兼に対し、光樹がそう言う。
光樹の両親は居酒屋を経営していて、何店舗か出店している。そのうちの本店が、光樹の家から近いところにあった。
「え、したいしたい!みんなでやろ!」
「まあ、俺はどっちでも。」
宏樹と俊哉はすぐにそう答え、昴流と京は悩む。
「えっと、俺はお父さんに聞いてからかな。多分大丈夫だけど……」
「……まあ、いいか。空夜いるって言えば。」
「えっ?!俺なの?」
「母さん、空夜が行くって言えばいいって言うし。」
「じゃあくうちゃん絶対参加だな!」
恋が既に夕飯を用意していないか気になるところだが、怒ることは無いだろうと思い、とりあえずLINEしておいた。
「くーちゃーん!光樹ー!なんかちょっと早いけど今から楽器片すって!」
「え、まじ?!今行く!」
そこに隣のクラスの航から声をかけられ、光樹が返事を返す。
空夜は理央と梢にも声をかけ、昴流たちに遅くなると思うから外で待つように伝えて、部活に合流した。
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