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〜陸玖side〜
(全然話す暇ないんですが?!?!)
決勝が近いとあって、練習にはいっそう熱が入っている。
ピッチャーの陸玖は肩を休めることもあり、投球練習より基礎練習を行っていて、悠平と組むことはない。
微妙に避けられているせいもあるのか、話す暇が全くと言っていいほどない。
(つらぁぁぁい!)
悠平と話せないことにもダメージを受け、嫌われたかもしれないという不安にもダメージを受け、陸玖はしょぼくれていた。
「赤津はどうした?」
「女房と話せないからしょぼくれてんのよ。」
先輩ピッチャーたちにもそう言われる始末である。
ちなみに野球ではキャッチャーのことを女房役だなんて言ったりするのだが、陸玖は本当に悠平を伴侶にしたい。
「ほんとに好きだなぁ。今付き合ってんの?」
「いや?まだ出直してないだろ。まあ……篠田だからな、渋るのもわかる。」
「……んぁー、この前告白されても首傾げてたからな。」
「なんですかその話詳しく。」
「「うおぉ?!」」
2人の後ろに素早くついた陸玖に、先輩たちは飛び上がる。
「いやお前、聞こえてたのかよ!」
「つーかもうちょっと気配をさせろ、怖い!」
「いいから教えてくださいよぉ!!」
「必死だな……可哀想に。」
哀れまれ、肩をポンと叩かれる。
なんだか悲しい。
「この前後輩の女子から、試合に応援に行っていいですかって聞かれて、いいよって答えてたんだけどさ。」
「は?」
「おー怖。続き聞けよ。んで、その女子が続けて言ったわけ。先輩のかっこいいところ、私だけにもっと見せてくれませんかって。」
「もうこんなん告白じゃん?なのにあいつ、頭にはてな浮かべちゃってさ。」
「最終的に、それは無理じゃないか……?って困惑しながら答えたんだよ。マジでくそ鈍感。」
「女の子ちょっと悲しそうにしてたよなぁ。しかもその後お前が来たら急に饒舌になるもんだから。」
「……うわ、見てよこの顔。にんまりしちゃって。」
「嬉しそうだな。こいつの頭の中、篠田のことと野球のことしかないんじゃねぇの?」
あながち間違ってはいない。
「ま、でもそんだけ鈍感だからな。ストレートに好きですって言わなきゃあいつには伝わらんわ。」
「なるほど……参考にします!」
「お?ついに告るんか?」
野球部の間では既に有名な陸玖の片思い。
1度盛大に振られているのも知られている。
「絶対にYESと言わせてみせますよ!」
「どうしたんだこいつ。」
「さぁな。」
なぜかテンションが振り切れてしまった陸玖を、先輩たちは不思議そうに見つめていた。
*
「……何、話って。」
「あの、さ……この前のこと。決勝の前にちゃんとしときたいと思って……」
悠平を呼び出したのは、学校から少し離れた公園だ。
練習後、そこに来てくれないかとメッセージを入れておいたのだが、悠平は来てくれた。
ひとまず嫌われてはいないらしい。
「あー……別に、気にしてねぇよ。いつものアレだろ。」
「……そ、そうなんだけど、その、いつものやつについても、ちゃんと話したいと思って。」
「なに?」
「俺は、興奮するとムラムラしちゃうわけだけど、でも誰にでもそうってわけじゃなくて……!」
「……そりゃそうだろ。誰にでも盛ってたらやばすぎ。捕まるぞ。」
「違くて!!」
悠平の方をしっかり向く。
「……なに。」
「ゆうくんだから、なんだよ。」
沈黙。
この瞬間が少し怖い。
「……だから?」
「へっ?」
「何が言いたいんだお前は。」
若干イラついた様子の悠平は、どうやら本当に何を言いたいのか分かっていないらしい。
「だから、その……」
「なんだよ、俺は性処理相手ってか?」
「ちっがぁぁぁう!」
「うるさっ、急になんだよ。うわっ?!」
肩をがしっと掴む。
悠平を真っ直ぐ見つめると、瞳が揺れた。
「ゆうくんが、好きなの。」
「……そりゃ、わかるけど。お前俺のこと大好きだもんな。」
「だから違うの!!」
「なんなんだよ!」
「恋愛的な意味!!!」
「……え?」
「俺は、ゆうくんのことが好きなの。LIKEじゃなくて、LOVEの方で。ついでに性的対象としても。」
「おま、それ……最後のやつ普通言うか?!」
「だって!もうバレてんだから仕方ないじゃん!」
「はぁぁあ、もう、お前はほんっと……かっこつかねぇなぁ。」
ふは、と笑う悠平に、陸玖の胸がキュンキュンと高鳴る。
「はーあ、じゃあ、付き合うか?」
「……えっ。」
「まあ、うちの部活は一応恋愛禁止だけど、お前の場合はここで振った方がモチベーションが落ちそうだしな。それにまあ、俺もお前のこと嫌だと思ってない。ちゃんと出直してきたしな。」
クスクス笑う様子も可愛すぎる。
「明日監督に報告してこいよな。まあ、お前の場合バレバレだとは思うけど。」
「……ほんとにいいの?」
「あ?いいって言ってんだろうが。よろしくな、彼氏さん。」
(明日死ぬ……?)
すんなりいっしまったことに、陸玖は呆然としてしまい、その日は何をするでもなく、そのまま帰った。
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