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~恋side~
(あれ。)
朝、書斎で仲良く寝ているよると春陽を見て、恋は少し驚いた。
しかしよるが安心した表情をしているので、そのまま2人とも寝かせておくことにして、開いていた扉をそっと閉めた。
「おはようお母さん。」
「おはよう。少し早いね。」
「うん。航と待ち合わせしてるから……」
「そっか。」
少し恥ずかしそうな空夜。
告白してきた子の名前を教えてくれて、たまに相談されるようになったが、最近かなり距離が縮まっているようだった。
コンクールに向けて練習するうちに、好きかもしれないという気持ちが強くなってきたらしい。
「陸玖は大丈夫かな?」
「どうかなぁ?緊張はしてそうだよねぇ。」
「だよね……まあ、篠田くんいるし大丈夫かな。」
「キャッチャーの子だよね。最近付き合えるようになったのもその子?」
「あ、そうそう。合宿中にスタンプ連打で送ってくるから何かと思ったら……付き合えてテンション爆上がりしてた。」
「家でもずっとぽわぽわしてたよ。」
恋も空夜もくすくす笑う。
「今頃しっかりしろ!って怒られてたりして。」
「試合が明日に迫ってて弱気になって?」
「うん。さすがにない?」
「ふふっ、どうかなぁ。陸玖、本当に自分のピッチングに自信ないみたいだもんね。」
*
~陸玖side~
「なにしてんだオラァ!しっかりしろや!!!!」
空夜の予想通り、陸玖は朝から悠平に怒られていた。
朝、軽く調整練習をした後で試合を見に行くことになっている今日。
陸玖も20球ほど投げて、あとは柔軟などの身体調整に入るはずだったのだが。
「なんなんだ今の球ァ!こんなんで調整になるかドアホ!!」
いつもと違う環境で緊張しまくっている陸玖は、かたくなりすぎていた。
「もっと体の力抜けや!!」
「ご、ごめん……」
「あーいつまた女房に怒られてんぞ。」
「監督より効くからなぁ。」
「さすが恋人ー。」
先輩たちはそんな事を言いながら笑っている。
監督から、陸玖の場合は悠平がいた方がいいと断言され、部活全体で知られた上に公認となった2人の交際。
そんな中での宿泊だが、甘い雰囲気など少しもない。
甲子園出場という重大な目的があるため、陸玖もそれは構わない。
しかし怒られっぱなしで落ち込んではいた。
「ったく……どうしたらお前はまともに投げられるんだよ。」
「篠田ー、ハグでもしてやれよ。」
先輩の1人がそんなことを言い出した。
「冗談ならやめてくださいよ。」
「冗談じゃねーって。陸玖の場合、お前の行動ひとつでご機嫌取りできるだろ?ハグで幸せチャージしてやれ。」
先輩は大真面目な顔をしてそう言う。
「……なんだ、そんなことでいいのか。」
(そんなこと?!ハグは"そんなこと"なの?!)
「ん。」
皆がいる前で平然と両腕を広げてくる悠平に、陸玖は困惑した。
「……んだよ、ハグしねえの?」
(くううううう可愛い!!!罪!!!有罪!!!!)
「します。」
心の中では叫び散らかしながら、陸玖は悠平の腕の中におさまった。
監督すら突っ込まないのだから、陸玖の評価は一体どうなっているんだのだろうと自分でも思ってしまう。
「ん、頑張れよ。お前ならできる。」
「……うん。」
「おら、離れろ。球よこせ。」
余韻に浸る間もなく、悠平はすぐに切り替えた。
(そんなところも好き……)
悠平にメロメロな陸玖は、ある意味で体の力は抜けていた。
「よっしゃ来い!」
悠平が構えたミット。
そこに向かってまっすぐ投げ込む。
パァン!といい音が鳴って、監督も頷いているのが見えた。
「今のめっちゃいい。明日もこれでいけよ。」
「う、うん!」
「んじゃ柔軟な。」
褒められ、ニコリと微笑まれた陸玖は明日へのやる気を募らせて、最後の調整に入った。
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