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~昴流side~
「京?」
こちらを見て黙っている京を呼ぶ。
「どうかしたか?」
「ううん、なんでもない。」
気にしないで、と笑う様子は先程よりだいぶいい。
本当に人混みで酔ってしまっただけのようだ。
「あれ、昴流?京くんも……こんなとこでなにしてるの?」
ちょうど荷物を持って戻ってきた空夜がベンチ前を通った。
「京が人酔いしたからここで休ませてた。」
「あ、そうだったの?大丈夫?」
「うん、もう平気。」
「顔色は悪くないけど……無理しないでね?」
「うん、ありがと。本当に大丈夫だよ。」
「俊哉くんはまだ中にいるの?」
「うーん、多分?俺、新に任せて出てきちゃったからちょっとわからんけど……」
「1度戻ろうか?生徒会片付けあるよね。」
「それなら京はここで待ってな。空夜も来たから、1人にしなくて済むし。」
確かに片付けは少しあるが、またあの人混みの中に戻すのは心配だった。
「じゃあ京くんと俺はここで待ってるよ。」
「ん、そうして。終わりそうになったら連絡する。俊哉は……空夜から連絡して、ここに来てもらえ。」
「わかった。」
「じゃあ俺は一旦戻るな。」
「うん。」
「あ、昴流くん!」
戻ろうとした昴流を、京が呼び止めた。
「ん?」
「ありがと。本当に助かったよ。」
「こんくらい気にすんな。」
柔らかく微笑む京に、笑ってそう返す。
昴流はそのままアリーナに戻った。
最初はほとんど話してくれなかった京が、柔らかく微笑んだり、たくさん話してくれるようになった。
それがなんだかむず痒い。
(親友って感じじゃね?)
幼馴染以外のここまで近しい友達は初めてで、それが嬉しい。
京はちゃんと自分を見てくれるし、気使いもできて優しいいい子だ。もっと仲良くなりたい。
(家行き来したりとか楽しそうだな。泊まりでゲームもいいな。)
想像するだけで楽しくなる。
京と一緒に過ごすことを考えるだけで、昴流は気分がよくなった。
*
~空夜side~
「なんかいい感じだったね!」
「そ、そうかな?」
「あっちから来たら昴流しか見えなくて、声かけたの失敗したって思ったー!」
昴流は、空夜が思っているより京のことを気にかけている。
「なんか、体調悪いの気がついてくれて……ちょっと嬉しかった。」
「いやぁ、昴流もなかなかやるじゃん。」
「初めて、自覚したよ。俺は昴流くんが好きなんだって……」
京はそう言ってぽっと頬を赤く染める。
今までは周りに言われて、そんな気がしていただけなのかもしれない。
「自覚したら、すごくドキドキしちゃって……恋するって、こんな感じなんだね……」
かぁぁっと赤くなる顔と、恥ずかしそうな表情。
「京くん、可愛い……」
思わず口からそうこぼれた。
「えっ、えぇ?!今のどこら辺が……?」
「なんか、わかんない。ぐわってきた、ぐわって。」
「えぇ……?」
空夜にも説明できないのだ。
京を見ていたら、自然に湧き上がってきた感情なのだ。
「恋すると女の子は可愛くなるって、昔言われてたみたいだけど……男女関係ないよね。可愛くなったり、かっこよくなったりするよね。今の京くんは可愛い。」
「え、えぇ……」
「すごい、こう、ぐさぐさ刺さった。」
自分でも何を言っているんだという気持ちである。
「でも俺、それで言ったら黎くんがすごく可愛いと思うんだけど……」
京に言われて、空夜も思い返してみた。
「確かに……黎くんは小野くんのことになると、急に可愛くなるよね。いつもはどちらかというと男らしいのに、すっごく可愛らしくなる。」
「だよね。健気な感じがするというか……」
「うんうん、小野くんのこと大好きな感じ伝わってくるよね。でも、あんまり仲良くない子には分かりにくそう。」
「あー……表情とか、わかりやすい部分に感情が出てくるまでにちょっと時間かかるかも……?人見知りだからかな。」
京の言う通り、表情が変化するのが見られるようになるまでには、少し時間が必要だ。
空夜と京の場合、恋愛相談という共通の話題があったため、すぐに打ち解けられて見せてくれるようになったけれど。
「黎くんにも報告しないとなー。京くんが完全に自覚したって。」
「うう……恥ずかしい……でも、いずれ相談することもありそうだし、早めに伝えておこうかな……」
「うんうん、それがいいよ。それに黎くんも喜ぶだろうし。」
京はスマホを出して、早速グループにメッセージを入れている。
「……行くタイミング見失ったな。」
楽しそうに話している空夜たちの少し後ろ、空夜に場所を聞いた俊哉はすでに到着していたが、まだ出るタイミングをうかがうのだった。
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