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日常 急転
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その日、僕は何気ない日常が始まる朝をいつものように繰り返していました。
幼稚舎から飛び級で高等部へ進学して、一年で卒業。
もうすぐ始まる大学二回生の冬休みは、去年と同じお祖母様のパーティのお供に忙しくなるのだろうと予定を開けていました。
来年の授業は、大学院への進学も視野に入れて選択しなくては行けませんねとぼんやり考えながら着替えていると、突然余裕のないノックと同時に入ってきた使用人から知らせを受けました。
『崇様がお亡くなりになりました』
急いで下さいと、お父様の寝室に引きずるように連れて行かれ、ベットで眠っている冷たくて固い父親の身体に触れたのは記憶にあります。
でも、そこからの記憶は輪郭さえ怪しく、何が起こって今はどんな状況なのかを把握出来たときには冬休みは終わっていました。
脳梗塞で眠るように亡くなっていたお父様。
あまりに急なお別れは、混乱を避けるためにお祖父様の指示で世間にはニヶ月伏せられることになりました。
体調を崩して一線から退かれていたお祖父様は、お父様の名前を借りて完全復帰。
お祖母様は気丈に振る舞われ、年末年始の恒例となっていたパーティをやり遂げられましたが終わった途端伏せてしまわれました。
僕も精神のバランスが保てず、部屋に籠もる日が続きました。
お祖父様はそんな僕を慮り、お父様が亡くなった事実を親友の凛太郎君にだけ話すことを許してくれました。
けれど、凛太郎君にはこのことを家族にさえ告げないよう約束して貰わなくては行けなくて。
とても家族仲が良くて、隠し事をしたことがなかった凛太郎君にはとても悪いことをしてしまいました。
それでも、僕には凛太郎君が必要でした。
冬休みの間も、毎日のように遊びに来てくれて、僕が急にヒステリックに泣き出すと手を握って一緒に泣いてくれました。
お父様の死とそれを隠して振る舞わなければならない日常、後継者として早々にお祖父様の指名を受けた重圧も重なったんでしょう。
けれど、協力してこの事態を乗り切らなくてはならない親族は、僕をコマとしか見てくれませんでした。
誘拐未遂に脅迫といった荒事から、誰がいち早く僕の婚約者を宛行うかまで、その手法は様々でしたが僕の争奪戦は無くなりません。
考え倦ねたお祖父様が、国政の『番プロジェクト』を使って親族の動きを抑えることに成功しましたが、正直父親を亡くしたばかりの僕にはこのプロジェクトへの参加を受け入れることに時間がかかりました。
2月のある日、お祖父様からプロジェクトで算出された僕に適した相手のリストが渡されました。
そのリストには、本来であれば当日まで知ることができない相手の名前だけで無く、素行調査含めた経歴も全てまとめられていました。
僕の一生の問題で、相手のことも考えなくてはなりません。
僕は『番プロジェクト』のことも凛太郎君に相談するつもりでいました。
けれど⋯リストの中に一樹さんの名前を見つけて、そこに書かれている内容を確認して。
凛太郎君には、絶対に見せられない内容に愕然としました。
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