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高校生活も中盤に差し掛かった2年生の夏休み。
笑えないくらいの金欠に陥っていた。
テーブルの上にひっくり返された財布から、
チャリンとコインが3枚落ちる悲しい音。
…なんということでしょう。
「なぁ親父、バイトさせてや。」
この一言が、
夏休みを忘れられないものにするだなんて
この時の俺は夢にも思っていなかった。
小さい頃から二言目にはケーキをネタにされてきた。
保育園じゃ何回ケーキ食べたいから結婚しよって女子に告白されたか分からない。
別に甘い物は好きだし、親父が売れ残りを食わせてくれるのも全く苦じゃない。
だけど俺イコールでケーキと結びつけるのだけはやめて欲しかった。
ド田舎にぽつんと建つ俺の親が経営するケーキ屋。
地元の人間なら人生で1度は絶対に俺の家のケーキを食って誕生日を祝っているという謎の自信がある。
それくらい美味いし、近場で他にケーキ屋なんてないし、
言ってしまえば一人勝ち状態だから当たり前なんだけど。
ただ、そんな生活を10年近くも続けていれば多少はグレるわけで、
ちょっとした意地で高校は電車を乗り継がなきゃ行けない都会の学校を選んだ。
ここまで行けば、流石にケーキイジリからは抜け出せると思って。
耳と頭皮の痛みに耐え、ピアスを開けたり脱色したり
それはもうありとあらゆるヤンキーっぽい見た目を追求してきた。
昔っから俺といえばケーキで、
無駄に可愛いイメージを持たれていたのをいち早く蹴散らすには
これが最も効果的だったのだ。
そんな俺も気づけば高校生活2度目の夏休み。
「バイト?助かるな、小遣い出すぞ。」
「さっすが親父!すぐ行くわ。」
俺は満を持してケーキ屋の息子らしく店の手伝いをすることになったのだ。
地元の連れは諦めた。
せめて高校の同級生とだけは遭遇しませんようにと願う。
…けどまあ、とりあえず涼しい上に金が入るなら何でもいいか。
シャワーを浴びて、髪は半乾きくらいがクーラーの中では冷たく感じて丁度いい。
基本ピアスは外すけど、
安定前の軟骨ピアスはちょっと外す勇気がないから放置。
一本も生えていない眉毛をちゃんと描くんだからそこは大目に見てほしい。
早急に家を出れば、
店に到着した時刻は11時半を指していた。
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