アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
4.再会?
-
「…誰か来るの?」
「んーっとね、伊月の後ろの席が西條っていう御一行のドンで、色々やべー噂が絶えない奴。
名前がなー、えっと確か…。」
「西條達来たよ!早く席つこっ。」
走って教室に戻ってきた女の子がその言葉を発した途端
それまで賑やかだった教室の空気は一変。
しんと静まり返った中、数名の足音が近づいてきた。
「とりあえず、お前あの集団とは目合わせんなよ!」
ガラっと勢いよく開かれた扉。
扉を開けた人物は端に寄り、
代わりに別の人物が一番乗りで教室に姿を現した。
「あ、思い出した。西條の名前な、木へんに冬って書いて…。」
「ヒイラ君……?」
「そうそう…って、え?」
隣で机に伏せながら、
僕にしか聞こえない内緒話みたいに教えてくれたこーき君を見れば
視界に数名の脚が映る。
ゆっくりと歩いてくる集団の先頭に立つのは
太陽みたいに眩しくて
笑う時に少し覗く八重歯が素敵な
クラスのムードメーカーだった彼
……とは真逆の
真っ暗な目をした男の子だった。
こーき君の驚いた顔が視界に入る。
目を合わせるなって言われたばかりなのに
僕は、先頭を歩く彼から目が離せない。
あの頃よりも身長が伸びて
髪の色も変わって
修学旅行で見た服装の系統とはまるで違って
でも、ちゃんと面影があって──。
「おい誰だコイツ。さっきから西條さん睨みつけやがって。」
柊くんの一歩後ろを歩いていた大きな人に見られてハッとした。
うわ、やってしまった……。
僕の高校生活その2が…お、終わる…。
いくら珍しい名前だからって
いくら似ているからって
苗字は違うし
こんな、怖そうで強そうな人が
あの柊君なわけないのに──っ。
「…榊?」
「あ、ぇ……。」
西條と呼ばれたその人は
僕の知っている柊君よりも低い声で
静かに、たった3文字の言葉を並べた。
「西條さんコイツ知り合いっすか?」
「…別に。」
この教室の中で、僕の名前を覚えてくれた人は何人いるだろう。
柊君の小さな呟きを、ちゃんと聞き取れたのは何人だろう。
少なくとも僕の隣であんぐりと口を開けたまま思考停止している彼を除き、
僕と柊君の数秒のやりとりを理解した人は0に近しいと思う。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
4 / 16