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その数日後、ゴールデンウィークの課題がわからないので教えてと家に来た静。
床に座る静と、勉強机に向かう僕。
奇声を発した静が、僕の椅子を180℃回転させ、向かい合わせに膝に座ってきた。
心臓が、バクバクする。
「答、見せて」
こてんと首を傾げ、僕を見詰める静。
静は、自分の魅力をわかっている。
自分が可愛く見える角度で、あざとい笑みを、僕へと向ける。
でも。
「ダメ」
ここで答だけを与えてしまっては、静のためにならないから。
「なんでもするからぁ」
僕の胸許にぐりぐりと頭を押しつけ、甘える静に、絆されそうになる。
「ダメなもんはダメ」
心臓の音が聞こえてしまいそうで。
可愛い静を無駄に甘やかしてしまいそうで。
僕は、渾身の力で静を引き剥がす。
「ちゅーしてやるからさ、見せて?」
「………は?」
一時の沈黙の後、意味不明だと言わんばかりの音が口から漏れた。
僕の心臓の音がバレたのかと、冷や汗が背を伝った。
「オレの唇、評判いいのよ? 厚めでプルプルしてるって」
タコのように口を尖らせ、人差し指でぷにぷにと自分の唇を触る静に、顔が赤くなるのがわかった。
僕は慌てて視線を外し、投げ遣りな声を放つ。
「おま…、彼氏いるだろっ」
そう。
静には、厳兜という恋人がいる。
「ちゅーの1つや2つ、何も言わねぇよ」
するりと顔を寄せる静に、葛藤する。
浮気に加担するのは、良くないコト。
でも、大好きな静の唇に触れたいという欲求が、心の底で渦を巻く。
「天馬は、初キスか。ファーストキスは、やっぱ、可愛い女の子としたいの? ま、お前から見たら、男同士のキスなんてノーカンでよくね?」
初めてのキスに怖じ気づいたのかとバカにされた気になり、心の隅が燻る。
その負けん気は、紅く色づき僕を惑わせる静の唇に触れたいという欲求へと変貌していった。
「練習台になってやるよ。彼女出来て、ちゅーもまともに出来なかったら、恥ずかしいだろ?」
鼻先にかかる熱い静の吐息に、興味が理性を乗り越えた。
静の唇の魅惑に、僕は絆された。
「わかった」
呟いた僕は、静の唇を見詰め顔を寄せた。
ーー ふにゅり
触れたその唇は柔らかく、僕の心を沸き立たせた。
ぞわぞわと走る興奮に背が痺れた。
「んぅ…っ」
直ぐに離れようとする僕の口から、驚きに塗れた音が零れた。
静の手が、僕の股間を弄っていた。
「勃っちゃった?」
擦るように撫でられるそこに、僕の瞳が盛大に游いだ。
「僕も…、男の人が…好き、……ってコト…?」
ぼそぼそと呟いた僕に、静が神妙な顔つきになる。
「ま、オレとキスして勃っちゃうくらいだから……かも、ね」
困ったような笑みを浮かべた静は、あっさりと膝から降り、机に広げていた僕のノートを手に床へと戻っていった。
それからも静とは、同じセクシャリティの人間として、飾ることなく友人として付き合っている。
キスをしたのは、あの一度きりで、僕と静の間に、恋愛感情は存在しない。
当たり前だ。
静には恋人がいるのだから。
もっと早く出会っていたら、僕にもチャンスがあったのだろうか?
厳兜の立ち位置で、当たり前のように、静の隣に居ることが、出来たのだろうか?
…そんなコトを考えたって、過去には戻れない。
それに、先に会っていたとしても、静が僕を好きになる保証は、どこにもない。
僕のこの想いに、望みはない……。
僕は静を好きになっては、いけなかったんだ……。
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