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一章十二話 慣れ
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翌朝、少年はベッドの上に寝かされていた。
服も新しいシャツとズボンに着替えさせられていた。負わされた傷は全て手当してあり、鎮痛剤を飲まされたので、今は落ち着いた状態だ。
「おぅ、大丈夫か?」
「はい」
少年は、はい以外の答えなど持ち合わせていない。もし、言った瞬間に手の平を返したように暴力を受ける気がして、本当は全身が痛いなどとは口が裂けても言えなかった。
「本当の事を言っていいぞ。
俺ぁ、殴ったりとか相手が苦しんでる様子見ながらするのが好きでな。
自分のものを好きに使っただけだから謝らねぇが、処置だけはきちんとするから安心しろ」
「はい」
それが当然の事だろう。峰岸は少年に何をしても許されるので謝罪は不要だ。だが、少年は何をしても峰岸から責められれば謝罪しても許されない可能性があるのだ。
それは松山の家に監禁されていた時に身をもって学んだ事だ。
(余計な事を言ってはいけない……)
気絶している間に医者に手当をされたと峰岸が説明した。
所謂闇医者で、警察にお世話になりそうな怪我をさせた場合、峰岸は必ずその医者に頼んでいるのだ。高額にはなるが、自分の性欲を満たす為の必要経費なのである。
「今日は休んで、傷が良くなってきたら家事でもしてくれると助かるがな」
「はい」
「次は来週あたり使わせてもらうが、構わないか?」
「はい。毎日傷を付けても構いません」
「バカ。昨日みたいなのはたまにだな。普通の性処理くらいはさせてもらうが、怪我してる時はしない」
少年はホッと胸を撫で下ろした。そして、すぐにベッドから下りる。
家事など親元にいた時も手伝い程度しかした事はなかったが、売られてから六年は一度掃除をして叱られた時以外は一切してきていない。
とりあえず掃除をしようと部屋を出ようとした瞬間、峰岸に腕を掴まれる。
「どこへ行く?」
「……掃除を」
「今日は休めって言ったよな? 言う事聞け」
「はい」
そして、少年は部屋の隅に体育座りをして丸まった。
「おい、具合悪いんだからベッドで……」
「僕は道具です。道具です」
これだけは譲れないところだった。例え、このような態度を取って、峰岸の逆鱗に触れたとしても変える事は出来ない。
さんざん物扱いをしておいて、中途半端に人間扱いなどされては、折角自分は道具なのだと言い聞かせて道具になりきろうとしているのに、心が揺れてしまう。
今更人間として生きる気力はもうない。
そんな少年の気持ちは知らない峰岸は、彼を道具として扱う事にした。
松山の影響力が強い。道具は自ら動かないと言われた事を覆す事が出来ないのだ。
毎日の食事や排泄や睡眠だが、少年は峰岸が言わなければ何も動けない。
指示をされなければ動く事すら許されない状態で生きてきたのだ。気付けば座ったままおもらしをしている事すらあった。
峰岸が全てを指示しなければならないのは面倒な事である。
仕方ないのでタイムスケジュールを作った。どのタイミングで排泄をし、食事をし、家事をするのか。
眠る時は一緒なので問題はなかったが、峰岸が仕事で外出している間の時間はそんな風に指示がないと、一切動かない。
「道具っつーか、全く懐かない犬みたいだな」
少年を見て峰岸はそう呟いた。
峰岸との生活に慣れてきた頃、問題が起こった。峰岸が飽き性であるという事だ。
相手を痛めつけるプレイとは言えない暴虐は、風俗店もセックスフレンドも、誰もが拒む。
少年は拒みようがないので、月に二度程相手をさせているが、毎度同じ相手だと飽きが来るのだ。
なのでせめて、性処理だけは外で風俗を利用するようになった。
このまま時が経てば経つ程少年の存在意義が失われていってしまうであろう。少年は常に不安を抱えていた。
峰岸の態度から、いつ捨てられてもおかしくないと感じてはしていたが、少年がどうする事も出来ない。
最初は五千万円で買われたが、今回は五十万円で買われている。次、もしどんなに安くても誰からも買われなかったら──純粋な恐怖がゆっくりと、真綿で首を絞められるかの如く少年の心を苦しめていく。
そんな峰岸との生活は二年続いた。
その日は峰岸の相手をする日で、急に顔を殴られた。目に当たったせいでその周りが内出血をしていて、青く変色した。
頬も何度も殴られ、背中に刃物で傷を付けられた。
「あっ……うぅ……」
痛みに慣れてしまい叫ぶ事はなくなったが、苦しんで呻き声をあげている。
峰岸は反応の薄さに、不満を持っていた。恐怖で震え、泣き叫ぶ姿が好きなのだが、少年は峰岸がどの程度で止めるかを知ってしまっている。
命に関わるラインを超える事はないので、耐えてしまえるようになった。
背中の切り傷も血がうっすらと滲む程度だ。峰岸はマンネリしている行為に面倒臭さを感じながらも、背中の血に舌を這わせた。
そして尻穴を犯し、射精をした。最初の頃は三回は尻穴や口内に射精をしていた。
だが、今では一回射精してしまうと、行為をやめてしまう。
行為が終わる頃には、少年は眠っている事が多い。目を覚ますと傷の手当が全て済んでいる状態で床の上に放り出されている。
今回は特に痣が酷く、右目は眼帯をされており、顔中が青い打撲痕がついている。
それも一、二週間もすれば治る傷だ、苦痛すら感じ無くなっていた。
というより、生きる上で必要な痛覚が鈍くなっているである。痛みを感じないから、何をされても反応が薄いのは当然の事だった。
これでまた二週間は放置されると思っていたその翌日の事だ。峰岸が初めて他人をこのマンションに連れてきた。
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