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陸人、お前あの日、
俺じゃなく、本人に言えば晴れて両想いだっただろうに。
俺たち、皆、揃いも揃って馬鹿なんだな。
いつまでも、三人揃って、馬鹿ばっかりだ。
ガラリと開けた窓から、風に乗って桜の花びらが舞い込んで来る。外を見渡せば、庭の満開の桜の木が、春の風になびいていた。
「新、そっちまとめたか?」
「うん、だいたい終わりー。」
最低限の服や布物をダンボール箱に詰め込む。
俺達は、この春、地元を離れる事にした。
何かあてがある訳でもなく、やりたい事が具体的にある訳でもなかった。
お互い、気が向いたから。
ただそれだけ。
でも、これ以上無い動機だった。
「でもさー、いきなり東京とか、やっぱ無謀かな。」
「珍しいな。お前がまともに考えるなんて。」
「なんだよそれ、」
俺の言葉に新が若干ムッとした顔をする。
「…大丈夫だ。」
「根拠は?」
「生きてりゃ、何とかなる。」
「………そっか。」
そうだよな、とうつむき加減に言うその顔は、物憂げで、でもどこか晴れ晴れとしていた。
「なぁ、修平。」
「あ?何?」
ふいに呼ばれて、ダンボール箱の蓋を閉めながら、うわの空で返事をした。
「好きだよ。」
「……は……?」
思ってもみないセリフに、思わず間抜けな声が出た。
「修平は?」
「………俺も…、同じだ。」
やっと聞き取れるくらいのトーンで返すと、新は満足そうに口元を緩ませた。
嘘も、隠し事も、
あの日の雪と共に透き通って消えた。
あいつにも来るはずだった春の日の中に、今、俺達はいる。
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