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甘い休日 1-6
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「それでどうするんだ?」
食後、新しくコーヒーを淹れ直した蒲生は希に訊ねた。きのう会ったときからなんだか希のようすがおかしいと思ったら、弟とケンカをしたという。
これまでいったいどうやって生きてきたのだろうと不安になるくらい、希は考えていることがすべて顔に出る。気持ちがまっすぐで、情に厚く、心根がやさしい。そんな兄の愛情を一身に浴びて育った希の弟ーー明は、以前一度会ったことがあるが、蒲生に言わせればかなりのブラコンだ。兄がいざというとき、蒲生でなく自分を選ぶであろうことを頭で考えるまでもなく理解している(もちろんいまの状況に蒲生が納得しているわけではない。希が明の保護者という立場でなくなったら、そのときは遠慮しないつもりだ)。
ーーのぞちゃんのこと、泣かせたら承知しないから。
にっこりと笑ったその目は決して笑ってはおらず、兄の見ていないところでしっかりと蒲生に釘を刺してくるあたり、大したタマと言えるだろう。
詳しい理由を希は話したがらなかったが、それでもようやく蒲生が聞き出したところ、明が恋人(希の弟はゲイで、相手はひとつ上の先輩という話だ)と一緒に夏休みの旅行の計画を立てているのだという。
ーー明はまだ高校生だぞ! 付き合っている相手と旅行なんて早くないか!?
内心そんなことはないんじゃないかと思ったが、もちろん顔に出すようなことはしない。
希は、まるで蒲生が明の相手だというかのように憤慨すると、表情にわずかな困惑を滲ませた。
「……どうするって、別に」
もごもごと口ごもりながら、
「それよりもこの豆、まじでうまいのな。蒲生の淹れ方がうまいからかな」
よほどその話を続けたくないのか、コーヒーに気を取られたふりをする。
「ーー奎吾」
「え?」
「蒲生じゃなくて、奎吾」
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