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首筋に手を触れると、しっとり汗をかいていた。
着替はさせた方が良いかも……
思ったものの他人の家だし、勝手に箪笥開けるのもどうなのかって一瞬躊躇ったけど、この場合仕方がない。
取り敢えず上の段から開けてみると、意外にも綺麗に整頓されていた引き出しの中に、スウェットの上下が揃えて仕舞ってあった。
これでいっか……
「智樹、ちょっと起きれる? 汗かいてるから、着替えだけしよ?」
ん、と小さく頷く智樹の身体を自分に凭せ掛け、手早く上衣を脱がせると、タオルで軽く汗だけ拭ってから、新たな上衣を着せた。
「下、自分で出来る?」
頷いてはいるものの、俺が支えていないとフラッと倒れてしまいそうで……
結局俺に身体を預けさせたまま、ベッドの端に座らせ、ズボンに手をかけた。
瞬間、熱のせいかぐったとしていた智樹の身体が硬直し、ガタガタと震えだした。
「……やっ、やめ……ろ……。やめてくれ……」
フラッシュバック……なんだろうか、半ばパニックに陥りそうな身体を腕の中に抱きとめた。
「俺だよ、和人だよ? 俺は何もしないから、 だから安心して?」
どうしたら良い……?
どうしたら、この震えを止めてやることが出来る……?
呼吸を乱し、震える背中を摩りながら、宥めるように言うと、徐々に落ち着きを取り戻した智樹が、俺の肩口で“ゴメン”と、吐息混じりに呟き、瞼を閉じた。
再び眠りに落ちた智樹をベッドに横たえ、やっとの思いでジーンズと下着を脱がした俺は、一瞬視界に入った下着の赤黒くなった染みを見て、改めて愕然とした。
酷いよ……
こんなの酷過ぎるよ……
いくら好きだからって、ここまでする必要がどこにある?
ただの我儘じゃんか……
俺は泣きたくなるのを堪え、汚れた服を一纏めにすると、それを手に寝室を出た。
洗濯機に放り込み、スタートボタンを押した丁度その時、ポケットの中で俺のスマホが震えた。
画面には翔真さんからの着信を告げる表示が浮かんでいて……
何で今なんだよ……
タイミングの悪さに溜息を落としつつ、暫くその画面を眺めていた。
でも、スマホが震えを止める気配はなくて……
俺は諦め混じりに画面をタップすると、ひんやりと冷たい空気に身体を縮こませながら、スマホを耳に宛てた。
「もしもし、どうしたのこんな時間に」
壁に掛かった時計を見上げると、時刻はもう深夜二時を迎えようとしていた。
「特に用事はないんだけど、今誰か傍にいんの?あ、もしかして雅也か……?」
最大限に落とした俺の声のトーンが気になったのか、何故か電話越しの翔真さんの声まで小さくなる。
「え、あ、うん。雅也が泊まりに来てんだ……」
流石に智樹の部屋にいるとは言えなくて、適当な言い訳を口にした俺に、翔真さんは“そっか”と言って笑った。
「お前さ、潤一が付き合ってる、って知ってた?」
「いや、聞いてないけど、誰と?」
俺が雅也から聞いていたのは、特別な関係の相手はいないってことだけだった。
暫くの沈黙の後、翔真さんがゆっくり口を開いた。
「なんかさ、智樹とと付き合ってるらしいんだ」
え……?
「な、何それ。なんで潤一君と智樹が付き合ってるなんて話に?」
思わず大きな声が出てしまい、慌てて手で口を塞いだ。
「誰から聞いたのよ、そんな話……」
頻繁にではなくても、智樹とはそれなりに連絡を取っていたけど、そんな話は聞いたことがない。
勿論、雅也からも聞いたことがない。
第一、本当に付き合ってるんだとしたら、恋人に対してこんな仕打ちはしないだろうし……
「同窓会の事で話したいこともあって、潤一と会ったんだ。その時本人から直接聞いたんだ」
何それ……
何でそんな嘘つくわけ?
意味わかんないよ。
潤一君が何を思ってそんなことを言ったのか、真意は俺には分からないけれど、怒りを通り越して呆れるしかない。
「まぁ、俺も結婚する訳だし、誰が誰と付き合おうと、別に関係ないんだけどさ……」
「翔真さん、本当に結婚すんの?」
「するよ? 寧ろしなきゃまずいじゃん、親の決めた相手だし」
「それは……そうかもしんないけどさ……」
それでいいの?
翔真さんは本当にそれでいいの?
誤解したままで良いの?
二人は付き合ってなんかないし、智樹は今でも翔真さんだけを思ってるんだよ?
でもそんなこと今の俺には言えなくて、
「そっか、大変だね、お坊ちゃまも……」
なんて嫌味ったらしい言葉を吐くことしか出来なかった。
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