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砂漠の色男2
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(取り敢えずここでモファロンにご飯をあげて、ひと休みしよう。今晩は宿に泊まるとしたら、出発は明日の朝早くかな……)
そんなことを考えながら馬車に乗り込もうとした少年だったが、それを遮るように後方で大きな音と悲鳴が上がった。驚いた彼が振り返るのと同時に、関所の衛兵が叫ぶ。
「緊急事態発生! 南部関所付近にて砂蟲《サンドワーム》による襲撃! 砂蟲《サンドワーム》の数は、……十を超えます!」
衛兵の声を聞きながら背後を見た少年は、先程までなだらかだった砂丘から十数頭の砂蟲が顔を出し、後方に並ぶ馬車を襲わんとしているのを目にして小さな悲鳴を上げた。
「皆様焦らず落ち着いて門の中へ! 緊急事態につき、通行許可は不要です! とにかく確実な避難を!」
「衛兵は砂蟲の迎撃態勢に入れ! 仕留めなくても良い! 国民を守ることに専念せよ!」
その指令が出されるよりも早く、関所に待機していた一部の兵は既に砂蟲の群れへと向かっていた。まるで、こういった危機状況をあらかじめ想定していたかのような動きである。
(す、すごい……)
この街の衛兵は恐らく、国王直轄の兵とは別の部隊だ。だが、それでもこれだけ迅速かつ的確な行動が取れるということは、それだけ訓練を積んでいる証拠である。
「さあ、貴方もどうぞ門の中へ」
兵の一人に促され、少年は慌てて頷いた。
こんなところで呆けていては、邪魔になってしまう。そう思いながら、少年はモファロンの前まで行って引き綱を握った。馬車に乗り込まなかったのは、この状況で外が見えなくなることを避けたかったからだ。そっと綱を引けば、賢いモファロンは大人しく従ってくれた。そのことにほっとしつつ、少年はもう一度だけ後方を振り返る。
巨大な生物を前に、しかし衛兵たちは随分と戦い慣れているようで、確実に砂蟲を抑え込み始めていた。ややパニックになりかけてはいるが、外にいる人々や馬車も滞りなく街へ入ってきている。この様子なら、事態はすぐに鎮静化するだろう。
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