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深淵10
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到底予測できたものではない。少なくとも、人の身でしかない王には不可能だ。なにせ王は、ウロと神との間にある天秤の存在すら知らなかった。
青褪めた顔で、しかしウロから目を逸らすことなく歯噛みした王を見て、ウロが笑う。
「あははは、悔しいって顔だ。僕が何者かを理解した上で、なお悔しいと思うんだねぇ。そういう身のほど知らずなの、面白くて良いと思うよ。でも、うん、そう。君が気づいた通り、君の負けさ。君の考えている通り、僕は十年前の存在で、君は今の存在だからね」
銀の王が、思わず拳をきつく握る。
ウロの言う通りだ。王は、神性魔法である過去視を用いて十年前のウロに会い、何気ない会話の中で真実を見出した。神の力を用い、自ら能動的に、高次元の存在たる神々に関する情報を得てしまったのだ。
一方のウロはどうだろうか。勿論、人間である王に高次元の事実の一端を知らせてしまったことについては、干渉と捉えられるだろう。だが、飽くまでも彼は世間話をしただけだ。少なくとも、一般的にそうとしか取れないように、話す順番や言葉を選んでいる。それを銀の王が確実に読み解くことを知っていたとしても、ウロが教えたことにはならないだろう。それほどまでに、彼は巧みだった。
そして何よりも、このウロは十年前の存在にすぎないのだ。ならば、この件によるウロからの干渉値は、十年前にとっくに適応されているだろう。故に、現在に反映される干渉値は全て神の側からによるものであり、そして恐らく、その値はこれまでの比ではないほどに大きい。
ウロの手により、干渉の天秤は絶望的なまでに神に傾いてしまったのだ。
(……敵う訳がない)
ウロにとって十年後の存在である王と駆け引きをするためには、十年後の状況を詳細に予測しなければならない。高次元の存在ならば未来視くらいできるのだろうが、わざわざそんなことで干渉値を引き上げるような真似はしないだろう。だから、ウロはただ予想したのだ。十年後の戦況がどうなっているか。十年後に天秤がどれだけ傾いているか。十年後の銀の王が何を考えどう行動するのか。それらを全て、予想し切ったのだ。
人間ごときに、そんな真似ができる訳がない。人として至れる中では最高峰のひとつに位置するだろう円卓の王たちでさえ、そんな芸当は不可能だった。
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