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深淵11
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歯噛みした銀の王に、ウロが慰めるような視線を向けた。
「そんなに悔やむことはないよ。だって君は間違ってなんかいないんだから。僕知ってるよ。円卓の王はみんな、常に最良手しか選択しないんだ。それがどれだけ非道でも、どれだけ自らが望まなくても、絶対に最良手以外を選ぶことはない。だってそれは、王に課せられた最低限の義務だ。そんなこともできない王なんて、存在する価値すらない。そうだよね? だから君が最良手以外を選ぶ訳ないんだよ。僕の目から見たって、君の選択は間違いなく最良だ。君が得られた情報から判断できるうちの、最も優れた選択だった。そして僕は君が絶対に誤らないって知ってた。それだけだよ」
そう言ったウロが、酷く優しい表情で微笑む。それは慈愛のようでいて、その実、侮蔑一色に染まった歪な笑みだった。
「僕は端から君たちなんて見てない。僕と駆け引きをしているのは君たちじゃない。君たちは、ただの盤上の駒だ」
身の程を知れと言いたげなその言葉に、銀の王はぴくりと指を震わせた。
己が盤上の駒に過ぎないことなど、王は判っている。そも、円卓の王とは神の塔を守るための防衛装置だ。それが駒でなくて何だと言うのだろうか。己が高次元の存在と対等であるなど、勝てるかもしれないなどと、思ったことすらない。先ほど歯噛みしたのは、己の選び抜いた真の最良が、結果的に神の足を引っ張ることになってしまった事実を悔しく思ったからだ。高次元の存在に敵わなかったのが悔しかったのではなく、神の一策として機能し切れていないかもしれない事実が悔やまれただけだ。
だからこそ、王は僅かな可能性に気づいた。
ウロは高次元の存在だが、種としての生命体である。概念としての神よりも遥かに強大な力を持っている一方で、概念としての神と違い、神としての在り方が存在しない。人々の望む在り方である必要がない。それはある意味で、概念上の神よりもずっと人間に近いとも言えるのではないだろうか。
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