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目覚め2
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押し黙った少年の腕を強く引いたアグルムが、そのまま部屋の外へ出て廊下を駆け出す。半ば引き摺られるような形で連れられた少年も、なんとか遅れないようにと足を動かした。途中で何人もの兵とすれ違ったが、皆アグルムや少年のことなど目にもくれない。かろうじて聞こえた会話の端々から察するに、この王宮内にも帝国からの侵入者が出たようだった。
ならばなおさら単独行動はまずいのではないかと思った少年が再びアグルムを見たが、やはり彼は何も言わない。だが、そんな彼の態度に腹を立てたらしいトカゲが、少年の肩からするりと移動し、アグルムの腕をぺちぺちと叩いた。
「ティ、ティアくん、」
慌てて止めようとした少年だったが、その前にアグルムがトカゲを一瞥し、眉間に皺を寄せる。そして、走る速度を緩めないまま、彼はぽつりと呟いた。
「陛下が今使っている魔法は、恐らく王宮だけ範囲外に設定されている」
「え、ええと……、」
さっぱり飲み込めない話に、少年は困ったようにトカゲを見た。だが、トカゲも理解できていないようだ。
「陛下は今、帝国兵を排除する為に国土全域を対象とした大魔法を使っている。だが、あれは魔力消費が著しい魔法だ。だから、十中八九あの人は適用範囲外の場所を設定している。その条件は、十分な戦力がある場所。王宮は間違いなくその対象で、もしかすると王都全域すらも陛下の魔法の範囲外かもしれない」
「な、なるほど……。で、でも、王宮に十分な戦力があるなら、移動しなくたって、」
「駄目だ」
言いかけた少年の言葉を、アグルムが遮った。
「俺の役目はお前を守ることだ。ならばより確実性の高い選択をしなければならない。お前が国王をどういうものだと考えているのかは知らないが、国王は間違いなくその国で最も長けた存在だ。ならば、俺にはお前を陛下の庇護が及ぶ場所にまで運ぶ義務がある。……それに、この様子ではどのみちお前の守護に回せる兵はいないだろう。そんな余裕があるなら、少しでも兵を王宮外に派遣している」
だから王宮はお前を守護する上で最適な場所とは言えない、と続いた言葉に、少年は内心で感心してしまった。アグルムは、王の命を確実に守るためにここまで思考していたのだ。
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