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目覚め5
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「おやおや、栄えある円卓の国家の方に名を覚えられているとは、私も随分と有名になったものですね」
アグルムの声に木々の隙間から姿を現したのは、まさしくあのとき赤の国で出会った魔導師だった。そしてその背後には、いつの間に現れたのか、あの大きな黒い竜のような魔物がいる。
「お久しぶりです、エインストラ。エインストラにおかれましてはご健勝のご様子、何よりのことと存じます」
わざとらしく微笑んだデイガーが、恭しく頭を下げて寄越す。そんなデイガーに少年が小さく悲鳴を上げて後ずされば、すかさずトカゲが口を開いた。恐らく、炎を吐いて少年を安心させようとしたのだろう。
だが直後、トカゲは炎を吐き出すことなく、小さく首を傾げて少年を見上げた。それがどういう意図なのかをはっきりと感じ取ることはできないが、何故だか少年にはトカゲが困っているように見えた。
「本当はエインストラのみをご招待しようと思っていたのですが、余計なものが二匹ほどついてきてしまいました。どうかご容赦くださいね」
両の手を合わせて困った顔をしてみせたデイガーを、アグルムが睨む。そんな彼を見て、デイガーはわざとらしく肩を竦めて返した。
「おお、怖い怖い。そんな恐ろしい顔をしないでくださいよ。生まれもっての類稀なる才で魔法を操るお方が、私のような魔導師ごときにそのような目を向けるなど。恥ずかしいとは思わないのですか?」
「誰が恥じるものか。お前がそれだけ警戒すべき相手であるというのは、円卓の共通認識だ」
そう言ったアグルムが、剣を握る手に力を籠める。
空を飛ぶデイガーの魔物と対峙するには、魔法を用いるのが最も効果的だ。だが、生半可な魔法では空間魔導によって全て返されてしまう。このあたりのことは、アグルムも把握していた。だからこそあの赤の王すらも苦戦したという話だったか。
だが、あれは飽くまでも国内においての話である。周囲への被害を考慮すると高威力の魔法は使えない、という状況だったが故の苦戦だ。
(だが、ここは十中八九リアンジュナイル大陸の外だ。高威力の魔法を制限するようなものは何もない。どう考えても、この場所に俺たちを転送する方が帝国側にとっては不利益だ。それなのに何故……)
デイガーの考えが判らない以上、迂闊に手を出すことはできない。そう考えて剣を構えるだけに留まっていたアグルムだったが、そんな彼を見たデイガーは、心底愉快だとでも言うように笑った。
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