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炎に焦がれる2
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そこで少年は、ふと気づいた。王の髪の毛が、くすんだ炎のような色から鮮やかに燃え盛る緋色へと、色を変えつつある。それはまるで、せめぎ合いを見ているかのようだった。毛先からじわじわと鮮やかに変化する色は、しかし中ほどのところで、まるで変わることを拒むかのように進退を繰り返している。
それが何を意味しているのかは知らない。だが少年は、そんな王の姿をただただ美しいと思った。
「……あなた、きれい……」
王の呼びかけに応えず、独り言のようにとろりと溶けたその言葉に、王が柔らかな微笑みを浮かべる。
「ああ、私もお前を愛しているよ」
だが今は惚けている場合ではないな、と続けた王が、軽めに少年の頬を叩く。二、三度そうすれば、ぱちぱちと瞬きをした少年の目に正気が戻り、次いで彼は見る見るうちに真っ青になって王を見た。
「あ、あな、あなた!?」
「ああ、私だ。確か、以前にも似たようなことがあったな。あのときと言い今回と言い、私はどうにも重要な局面で遅刻をする節があるようだ。苦労を掛けてすまない」
飄々とした調子で言う王に、しかし少年は珍しく大きめな声でそれを遮った。
「そ、そんなことは良いから、あ、あなた、こんなところに居て大丈夫なの!? ここ、魔法が、使えなくて、そ、それに、リィンスタット王陛下が、あなたは身を隠していないと、危ないって、」
言い詰める少年の唇を、王の指先がそっと塞ぐ。そして王は、ぱちりと片目を閉じて笑ってみせた。
「お前が心配するようなことは何もない。全て私に任せておけ」
そう言って少年の額にキスを落とした王に、少年が押し黙る。こういうことをされてしまうと、どうにも言葉を続けにくいのだ。それを判ってやっているのだとしたら、なかなかに性質が悪い。
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