アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
炎に焦がれる3
-
そんな二人の様子に、デイガーも少し落ち着きを取り戻したのだろう。彼は嘲るような笑みを浮かべて王を見た。
「任せろも何も、この空間で精霊魔法を使えないのは貴様も同じだろうに。兵士だろうと王だろうと、魔法が使えない身で私に敵うと思っているのか?」
デイガーの言っていることはもっともだ。そう思った少年だったが、しかし王は普段と変わらぬ様子でデイガーを見据えている。
(……あれ? でも、この人がアグルムさんじゃなくなったときって、炎が……)
魔法が使えないなら、あの炎は一体何だったのだろう、という疑問を抱いた少年だったが、それを口に出す前に王が言葉を発した。
「この空間、貴公が創ったものではないな? ありとあらゆる次元に存在するという精霊を全て遮断するなど、およそ人の成せる業ではあるまい。……さしずめ、この空間を生み出したのは例のウロという人物で、貴公が担っているのはこの空間への道を繋ぐ役目くらい、といったところだろうか」
デイガーを挑発するようなわざとらしい台詞選びは、確かに効果があったようだ。僅かに頬を紅潮させたデイガーが、ギッと王を睨む。
「黙れ! だからなんだと言うのだ! 貴様が魔法を使えないことに変わりはない!」
「貴公は大変判りやすくて重宝するな。故に、できることならばもう少し泳いでいて貰いたいものだが……、状況を考えると、そうもいくまい。このまま泳がせるには、貴公の能力は優秀すぎる」
そう言った王が、すっと腕を横薙ぎに振るう。すると、王の足元からぶわりと炎が噴き上がった。それに驚いたのは、デイガーと少年である。
「なっ!?」
ここには精霊がいないのだ。だというのに、王は悠々と、まるでそれが当然であるかのように炎を生み出している。
絶句するデイガーに、王がゆるりと笑んだ。
「どうした? 私を殺すのだろう?」
穏やかな声が、いっそ無機質な響きを持ってデイガーの鼓膜を震わせる。炎を統べる王を前に、彼は化け物を見るような目をして叫んだ。
「お、お前がいかに王と言えど、この空間で魔法を使うことは不可能なはずだ! 精霊がいなければお前らは魔法が使えない! それが何故!?」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
153 / 197