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爆笑
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愛がコッチを見てくれ無かったことがちょっと気がかりだった。
それを隠すように急ぎ足で裏門に向かう。デカイ男がひとり、ボーッと空を見上げたり、電話を耳にあてたり、ニヤついてみたりしている。
…………。相当気持ち悪いけど、なんか良いことあったのかな。それとも彼女からの電話とかー?いや、まあなんでもいいんだけど。
「…今何してんだろ。…へへへ」
にしても、緩んだ顔して笑って、幸せそーだなー!!!!絶賛センチメンタルの俺、とっても不愉快です。じゃりっ、と俺が、わざと砂の音を鳴らしてとなりに立っても気づかないようだから「なぁーっにニヤニヤしてんだよ!」と少し大きめに声をかけると、「おおわッ!?」と大袈裟に慌ててみせた。スマホ、放り投げそうになって、デカイ背中まるめて、その男はこちらを向いた。
「い、いい、いつからそこにいたんだよ!声かけろよ!!」
「さっきっからだよバーカ!大輝がお空見上げながら変な笑い方してるから声かけづらかったんだよ!普通に怖えーだろ!こーんな顔して空見ながら…へへへっ…だぞ?」
思い切り顎をしゃくれさせて、さっきの相当気持ち悪かった大輝のゆるんだ顔のマネをしてみる。まあ、八割ぐらい盛ったけど。案の定「俺そんな顔してたか!?」なんて言いながら、スマホをケツポケットに押し込んだ大輝を見て、俺も、スマホをケツポケットに戻した。
ちらり、と一瞬、愛から連絡が来てんじゃねーかって確認したんだけど、やっぱりそんな気配は微塵もなかった。あの野郎、なんのつもりだ。あんなシカトキメるようなマネしたらちょっと、なんか、もやっとすんだろ!!
舌打ちをしそうになるのをグッとこらえる。ため息もナシだ、ほら、幸せ逃げちゃうーつって、となりのデカイ男にまた笑われっから。
すっきりしない気持ちを隠すようにぐっ、っと伸びをして、ゆっくりと歩いて裏門を通り抜ける。
「よっし行くか!」
「おー!ゲーセン久々だなー!」
「高校の時の大輝っていっつも何してサボってた?」
「んー…普通にゲーセンも行ったけど、ぶきっちょ揃いだったからなあ。それよりも公園行って紙飛行機飛ばしたり、川行って水切りしたり、あと散歩とか。たまに近所の子達に混ざってサッカーとかキックベースとか…そんなん?」
へぇ、大輝ってサッカーもできるんだ?俺、スポーツん中だったらサッカーが一番すき、っていうか、小学校ん時はサッカーチームなんかに入ってたぐらいだし。ま、今は?バンド一筋だけどね。それにしても、意外。そんなこともねーか?んーやっぱちょっと意外。大輝って結構遊びまわってんだなーとか、思って見たり。それをそのまま口にだしてみたり。したら「やることなかったからな!!」とゲラゲラ笑いながら言われた。いや、あったろ!!あったろ!!やること!勉強とか!
って、まあ、それは俺もひとのこと言えねぇけどね!
駅前のゲーセンに着くと、大輝の目が光った。
「おおお!やっぱなつかしー!!」
なんて、いいながら。
駅前のゲーセンで、俺や宮内はよく時間を潰したりする。庄司くんはパチンコばっかりだからこっちにはあんまりこないけど、古賀もここでよく見かけるんだよなー。ほら、今日も俺達以外のサボり学生が点々といる。そっか。大輝にとってはもう懐かしいって感じる場所なんだな、ここ。俺もこの街を離れたら、同じことを思うようになるんだろうか。
その前に愛とも遊びに来てみようか。
あいつこういう煩いとこ、あんまり好きじゃねーけど。
よっしゃ!!今日は遊ぶぞーー!!
「何やるか!」
「どーしよっかなー!…あっ!!」
「え?あ、大輝ー!」
ゲーセンにはいるや否や、ダダダっとUFOキャッチャーに向かって走りだしたデカイ男。周りがビビってるって!まじ!ウケる!笑いながら大輝について行くと、べったりととあるブースの前に張り付いていた。
「恋!俺これ欲しい!!」
キラキラした目でそういわたので、視線をさげる。…。
………?
え?
「え……….え、これ?」
大輝が狙ってるものは、…なんかちょっと趣味を疑うっつーかなんつーか、えーー…って感じのぬいぐるみ、ぬいぐるみっていうか、ややデカめのマスコットっていうか、まあなんにしろブスなうえに配色が目に毒レベル。それを真顔で「え?可愛くねえか?」なんて言えてしまう大輝に俺、ちょっと引いてる。
「いやどう見てもブサイクだろ!!」
「どこがだよ!!」
率直な意見を述べたまでだよ!!えーって顔をしていると、大輝はケツポケットから財布を取り出した。まじか。この男、まじか。百円玉を二枚取り出して、何のためらいもなくコインを投入しやがったけど、まじか。そんなブスなマスコットに200円の価値はねーと思うけど、意気揚々とプレイを始めるその姿を見てると、UFOキャッチャーが得意なように見えた。
「おっしゃー取るぞー!」
「へえー、大輝ってUFOキャッチャー得意なの?」
「得意得意〜!見てろよ一発で取ったるから」
「ほんとかよ〜」
…得意なように、見えたけど。な。
うん、だいたい自分からUFOキャッチャーが得意だとかなんとか言い出すやつって得意じゃねぇんだよなー。ちょっとの苦笑を隠すように、中にあるカメレオンをもう一度見てみる。が、積み重ねられているカメレオンの群れ達はやっぱ皆がみんな目が怖すぎ。ギョロリとしたそれが怖い。ラリってるように見える。これを可愛いとかいってる大輝が理解できない。緑のブスに赤のブス、黄色のブスに七色に分けられたブス。色のセンスもどうかしてると思うけど、さらにどうかしてんのは大輝が七色のブスを狙ってるってことだ。
大輝のデカイ手が、横ボタンを離し、今度は縦移動のボタンをパチンと押した。そのカメレオン目指して、ガーッとクレーンが移動して行くのを見て「いいぞいいぞ〜そのまま〜〜」と言ってるけれど、いやいや…いや、…それぜってー取れねぇって。
「…………。」
「ここだッ!」
パッとボタンから手を放すと、止まったクレーンはカメレオンの頭上。アームが開いて、ゆっくり下に降りて行く。カメレオンの腹のあたりを掴んだアームがそっとカメレオンを持ち上げるけれど、ボトッと虚しい音を立てて、落ちた。
「…え!?」
「ぶっ…あはははははは!!!取れてねえし!!」
「何故だ!!俺の計算は完璧だったはず!!」
「いや落ちてるから!!」
バカだ!!バカすぎ!!すげえ何で?!って顔してるけど、そもそもアーム、よく見ろよ、片方細工されてんじゃん!そう言うやつは大概、本体を付かんじゃだめなんだけど、分かってないらしい。
諦めっかなーと思っていたけれど、大輝は何故か突然笑い出した。
「ふはははは…いいだろうレインボーカメレオン。この宮崎大輝の恐ろしさ、見せてやる!!」
「何言ってんのほんとに!!」
口をついて声がでた。バカだ、本物だ、やばい!
「恋も見てろ!次で取るからな!」
そーやって金吸い取られるんだよ!って言葉を飲み込んで、闘志の芽生える大輝の背中をぽんと叩いた。
「はいはい!がんばれオニーサン!格好いいとこ見せてよ!」
とか。いいながら。
しかし五回だ。両替までしてきて、五回も挑戦しても、カメレオンは全く動かない。なんで気づかねぇの?本体じゃなくてもっと掴めるとこあるじゃん!
「何故!!!っつうか金返せ!」
「そういうゲームだから。ってか大輝下手過ぎ!!」
「嘘だ!!」
あー、散々笑ったら腹イテーー!
すげー悔しそうで余計ウケるんだけど!!俺はバシバシと大輝の背中を叩きながら、ずっと思ってたことを言ってやった。
「大輝ほんとは苦手だろ!UFOキャッチャー!」
「苦手じゃねえし!!できるし!!」
「あはははははは!5回やって一匹も取れなくてもそれ言うの!」
ぎゅっと財布を握りしめて、肩を落とす大輝、なんだ?なんかその背中がちっさく見えるんだけど!そんなに欲しいの、このブスカメレオン!
ふぅ、と小さく息をついて、ぐりん、と一度首をまわす。今日、こうやって付き合わせてんだし、プレゼントしてやろう。
「しょーがねーから、この恋様が取ってやるよ」
「え?」
実は俺、UFOキャッチャーすげーすき。これってほんと色々コツがあってさ、気づかないやつの金はどんどん財布から消えていく仕組みになってんだよなー。一時期ハマりすぎて、山のように景品手にいれては愛の部屋に放りこんだもんだ。愛は困った顔しながらも、その景品の山を今でも持っていてくれる。ってなわけで、俺はさっきから大輝がミスりまくってんのを横目に、攻略法を見つけていた。さっさと財布から200円をとりだして、投入口に押し込む。そしてバカなことに千円、このカメレオンに千円もかけた大輝に教えてあげることにした。
「こーゆーのはコツがあんの」
「コツ?」
大輝の視線を感じるけど、無視。
じーっと集中して、ガラス越しにあるそれを狙って、クレーンをカメレオンの上に動かした。コツ?ちょっとだけ、ズレたとこを狙ったってことかな。
「ほら、大輝」
「あ、おおお…!!」
カメレオン本体と説明書っぽいものの紙を繋いでいるプラスチックの輪っかに、アームを引っ掛ける。ずる、ずる、とカメレオンが引きずられて、がこん!と取り出し口に落ちた。おー、一発で取れちゃった。こんなことなら無駄金使わせないで、最初からとってやったらよかったかなーなんて思いながらカメレオンを引っ張り出す。
「ほらよ!一発で取ったぜ!」
「すげええええ!!」
「まあ俺、こんなブッサイクいらないから!大輝にやる!」
「え!?マジで!?普通にもらうよ!?」
「いいよいいよ、今日付き合ってくれるお礼な!安いもんだ!」
「なんてこった…ラブリーすぎる…」
「だからどこが!!」
すげー喜んでくれて嬉しいわ、たった200円のお礼でごめんなー!って感じだけど、大輝はデカイカメレオンのぬいぐるみ、マスコット?なんかごめんよくわかんないそのくねくねしたでっかい物体を、無理矢理リュックにくくりつけている。
「やべえリュックが超ラブリーだわ」
「それ絶対東京帰るとき取れよ!!超恥ずかしい!!」
つーかすげーーーーーーダサい!目がラリってるカメレオン、怖すぎだから!!
「うっそ!!めっちゃ可愛いだろ!!」
「ブスだっつってんの!!」
何回ブスっていっても聞きやしねえから、色んなゲームをして勝敗を決めることにした。俺が勝ったらそのカメレオンはブス!大輝が勝ったらそのカメレオンはラブリー!つって。
エアホッケーは俺が負けた。でも、カーレースは俺が勝った。いい勝負しすぎて、カメレオンがブスかどうか決めることはできなかったけれど、大輝はボソリと「こいつの名前ゴンゾーにしよ」と言った。
ごめん、爆笑した。
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