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願い
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「僕だってあんな事したかったわけではありませんからね。」
ため息をつきながらそう言うと、寝ている紫原君は顔を背けました。
現在僕たちは保健室にいます。僕の打った黒板消しが見事紫原君の頭に当たり紫原君が倒れてしまったので、先生たち三人掛かりでやっと連れてきたところでした。ちなみに僕は運んでません。腕が壊れますから。
紫原君はよほど赤司君の悪口を言われたのが嫌だったらしく、今もなお拗ねています。
「だってさ〜…あいつ赤ちんのことお高くとまってるとか言ったから……」
「だからってあんな本気で殴ることはないでしょう。相手の生徒、歯が折れていましたよ。」
「一本くらいいいじゃん。」
「三本です。」
「………」
沈黙。僕は別に気まずくはありませんが、紫原君はかなり気まずそうでした。どうせ、自分がいけないということはわかっているのに謝れないからでしょう。
──こういうところは赤司君そっくりですね……あ、違いますか。赤司君は「自分は正しい」系男子でした。
ハァ、とまたため息をつき、僕が立ち上がると、ビクッと布団の中で震える紫原君。
「別に怒りませんよ。ほら教室に戻りましょう?」
「……!うん…!」
ものすごい勢いでベッドから出る紫原君。
保健室を出て、また教室に戻る道を歩き出す僕ら。
「……別に起こりませんよ。今は。」
「今…は?」
「今日は高尾君も呼んで作戦会議ですね。」
「く、黒ちん、暴力はよくないよ〜…」
「君には言われたくありませんね。」
「う……」
限りなく、平和に近い空間が、
ずっと続けばいいのに。
でも、そんな僕の願いは、
叶わなかった。
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