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謎
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「ハァ……ハァ……ハァッ……」
静まり返った廃ビルには、僕の荒い息遣いだけがこだましていて、周りに倒れている男子たちは呻き声すらあげていませんでした。
──な、何が…起こって……
軽蔑されたくないと、そう思ったところまでは覚えていました。しかし、その後の記憶は全く無く、気づいたらこの状態。ただ一つ分かることといえば、おそらく僕が男子たちを倒したのだろうということでした。
その証拠に、僕の手は相手の血で少し汚れ擦り剥けていて、わずかに痛みが残っています。立っているのも僕一人で、倒れている男子たちは円のように僕を囲んで倒れていました。
僕では倒せるはずがない。でも、そうじゃないと説明がつかない。逆に、そう考えると全ての合点がいく。どれだけ理解が出来なくとも、僕はその考えを無理矢理肯定しました。
「服を…着なければ……」
フラフラの体は、服を着るだけで精一杯のようで、外に出て行く力など残っていませんでした。倒れながらかろうじて携帯を掴むと、電話の向こうから聞こえる高尾君の声。通話時間的にも、ずっと繋がっていたようでした。
「た、かお…君……」
『テっちゃん!?良かった、無事!?大丈夫?』
「動けはしませんが、なんとか、大丈夫です……いま、何処ですか……」
『廃ビルを見つけたから向かってるとこ!もうすぐ着くから!』
その言葉通り、数分もしないうちに大きな音と共に扉が開き、汗だくの高尾君と紫原君が入ってきました。起き上がろうとしても出来なかったので、とりあえず顔だけそちらに向けました。
「早い……です、ね。」
「テっちゃん!!」
「黒ちん!」
僕を抱き上げながらボロボロと泣き出す高尾君。全く、本当によく泣く人です。紫原君は心配そうにこちらを見ていましたが、僕がとりあえず無事だとわかると安心したように寝転がりました。
「知っています、か……泣きすぎると、かおが変形、するんです、よ……」
「いーの!!」
「よくないでしょう……」
──というか、君は何も悪くもないのに、何故泣くんですか……
意識を保つのも限界で、とてつもない眠気が襲ってきて。だんだんと閉じていく瞼に必至にブレーキをかけました。ぼんやりと高尾君を見れば、また何かを叫んでいました。
その高尾君がなんだかさらに泣いている気がして、その涙を拭おうと手を伸ばしましたが、その手が彼の頬に辿り着くより前に、僕は意識を失いました。
意識を失うその直前。
脳裏に悲しく笑う僕が浮かんだ気がしました。
全身血だらけで泣きながら笑う僕は、
なんだか僕でないようで、
確かに僕でした。
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