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惟葉side
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帝光中は見た感じ普通の高校だった。
ただ、一点を除いては。
バスケ部の、キセキの世代と呼ばれる五人。
なんでも、十年に一人しかいない天才が五人同時に現れた世代らしい。しかも、イケメンらしい。
一度見かけたことがあるが、確かになかなかのイケメンだった。
「次はあの人たちにしよぉっと。」
そう独り言を呟いて、入部届けを取りに行った。
流石にバスケはできないし、近づくにはこれが一番いいと思ってマネージャーにした。
いよいよ初対面。
挨拶したけど、やっぱりイケメンだった。
でも、途中でキセキの隣にもう一人誰かいることに気づいた。
死んだような目。
超無表情。
しかも同級生に敬語。
そしてこの影の薄さ。
薄い。
薄いよ。
薄すぎでしょ。
危うく心臓止まるかと思ったわよ。
そんな影が薄くて、重要人物にも思えないのに、黒子君は何故かキセキの人たちと、特に青峰君と仲が良かった。
次の生贄はこの子、黒子テツヤ君に決定ね。
一応二軍の人達にも一応挨拶をして、私はマネージャーの仕事を教わりに行った。
マネージャーはすごく大変だけど、メモをちゃんととって、笑顔で対応すれば出来ない仕事でもなかった。
元々私は仕事はちゃんとこなすし、人当たりも悪くない。
誤解されるのはこのメイクと髪型のせい。
けどこれは、私の盾だから。
一ヶ月も経った頃、私は完全に認められて溶け込んでいた。
……そろそろね。
黒子君を呼び出して、先に体育館裏で待っていた。
時間通りにやって来た黒子君は、これから嵌められるのに何も知らない顔で来た。
別に青峰君なんて好きでもなんでもなかったけど、黒子君としょっちゅう一緒にいたからなんとなく青峰君の名前を使った。
アムカは裏切られた時期に少しハマってしまっていたことがあるから、切るのには躊躇しなかった。
それでも、少し痛い。
精一杯の声で叫んで、その場に座り込む。
誰が最初に来るかなって考えながら、ワイシャツダメにしちゃったなぁ、とか思ってた。
そしたら、意外にも最初に来たのは緑間君だった。
たまたま近くにいたのかな?
でも、本当に意外。
彼は多分すごく真面目だから、初対面の時も一番印象が悪いと思ってた。
だからなのかな?
すっごく嬉しかった。
緑間君に支えられて立ち上がると、騒ぎを聞きつけたバスケ部員たちがわらわらと集まってきた。
沢山の人が私の周りに集まっても、緑間君は一番傍にいてくれた。
そのうち、キセキの人達も来た。
青峰君に突き飛ばされて座り込む黒子君を見て、少しだけスカッとした。
これは私が裏切られた時の話だけど、私の学校にも黒子君みたいな立ち位置の女の子が一人いた。
さして可愛いわけでもないのに、なんでかそばにはいつも男の子がいて、いかにも守られてますって感じの子。
しかも、守られて当然って顔してて、いい噂は聞かなかった。
実際、裏切られた後一番からかったりいじめてきたのはその子とその周りにいた男子だった。
男子たちのあざ笑う声と、その子の高笑いは今でも頭に残ってる。
黒子君はその子と全然違うってことは一ヶ月見ててよくわかったけど、やっぱり重ねて見てしまう。
ほら見て。
私、あの時と逆の立場にいる。
もういじめられない。
もう悲しくない。
黒子君はその後強制退部をさせられて、退学になるところを直接頼んで停学にしてもらった。
この計画は黒子君が近くにいることで最も効果が発揮される。
だから、黒子君を退学させるわけにはいかない。
でも、反論はさせないようにしないと。
知り合いに頼んで襲わせてレイプさせて、学校に来ても味方はいないってことを分からせて。
絶望に打ちひしがれる姿をあの子と重ねて、すごく優越感。
そして、あの日以降、緑間君は極力そばにいてくれた。
クラスも一緒だったから余計に。
少しでも体調の悪い演技をすれば、いつもの真面目そうな顔を崩して心配してくれる。
ただの不注意でつまずいただけでも何故かすごく慌てる。
優しいんだなって思った。
私は、近くにいちゃダメなんじゃないかとも思った。
だって私、嘘つきだもん。
彼はキレイで、私は汚れてるから。
そこまで考えて、彼が好きなんだって気づいてしまった。
計算外。
誰かを嵌めても、ここまで心配してくれる人なんていなかった。
同情、同情、同情。
別にそれは構わなかった。
バレたことはないけど、例えバレてもいいと思ってた。
だって私は、この世に壊れない絆なんてないって証明できれば、それだけでよかったから。
けど、今回は違う。
バレたくない。
失望されたくない。
拒絶されたくない。
失いたく、ない。
もっと違う形で会いたかった。
黒子君なんて、嵌めなければよかった。
でも、もう遅い。
なら、何がなんでも隠し通さなきゃ。
どうせこの学校にも長くいられないんだから、せめてその間だけでも。
そう、思ったのに。
ゲームオーバーに、なっちゃった。
悪者は、舞台からでないと。
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