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火曜日4
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そう言い切ったあと、しばらくの間赤司君は何も言いませんでした。僕も涙を止めるのに必死で、口を開きませんでした。
「……奇跡だとして。」
突然の呟きに顔を上げると、赤司君は俯いていて表情は分かりませんでした。
「仮に全ての出会いが奇跡だとして、だ。その次にやってくる出会いが辛いものだと分かっていても、お前はそれを受け入れるのか?」
赤司君が何を思ってその言葉を言ったのかは分かりません。
僕にできるのは、その言葉に精一杯答えることだけ。
「僕は、受け入れます。例えその先に辛い出会いがあっても、出会いを否定したくないんです。」
ぽろ、とまた溢れだした涙を拭いながら笑う。泣きながら笑う顔は酷くおかしなものだったと思います。
「僕、どうしても希望を捨てきれないみたいなんです。辛い出会いが連続しても、きっとその次はって思ってしまうんです。少し前、とても辛い出会いが連続してもう嫌だって思ったばかりなんですけど、結局、また期待しちゃってるんです。」
惟葉さんに嵌められて、赤司君や青峰君たちに裏切られて、いじめにあって、レイプもされて。
ボロボロになった僕に残されたのは、絶望も悲しみも何もなかった。
逃げたい。この現実から、この世界から。
そう思った瞬間も確かにあった。
でも、そのおかげで高尾君の優しさに出会えた。紫原君の優しさにも、黄瀬君の愛にも。
「僕、これで結構幸せなんです。」
顔を上げた赤司君は、とても辛そうで。
「僕はそう思えない。辛い出会いはしたくない。耐えられる自信なんてない。」
それはきっと、大切すぎる人ができたから。
先に待つ出会いが別れを連れてくるなら、誰だって嫌なはず。
…それが大切な人なら、尚更。
「それでもいいと思います。」
これを言った結果僕がどうなったとしても、僕は言わなければいけないと思う。
「別に誰もが同じでなければいけないことなんてありません。悩んで、迷って、逃げて……そういった軌跡も、大切な奇跡です。」
だから、と言葉を紡ぐ。
「赤司君の決断が間違っているわけではありません。」
その決断が、僕を殺すというものだったとしても。
……暗くて苦しい闇の中で。
助けてくれる人なんていなくて。
自分でもがくしかなくて。
それでやっと出した答えが、間違っていると言えるわけがない。
間違ってるわけがない。
「だって、それが君の精一杯なんですから。」
仕方ない、ではない。
これが最善策、でもない。
違う。
これか正解、だ。
「僕は……」
ギ、と開いていた扉が全開まで開けられる。
眩しすぎて、嬉しすぎて、目を細める。
「この世に間違いなんてないと思います。」
幼稚な考えでも。
誰かに違うと否定されても。
僕はそうは思わない。
扉の向こうには、僕の大好きなみんながいた。
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