アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
各国壁ドン事情 金の国編6
-
底冷えのするような冷たい赤の瞳が、官吏をねめつける。瞬間、官吏は弾かれるようにして立ち上がった。
「いっ、いえっ私は何もっ! 何一つ疚しいことなどしておりません! それではギルヴィス王陛下! これにて失礼致します!」
そう叫んでお手本のような最敬礼をした後、あっという間に走り去ってしまった官吏に、王はぽかんとした顔をした。それからヴァーリア師団長を見上げ、こてりと首を傾げる。
「ヴァーリア?」
「慌ただしい官吏ですね。何か急ぎの用でも思い出したのでしょう。陛下がお気になさることではないかと」
先程までの冷え切った目はどこにいったのだ、と言いたくなる、それはそれは優しい微笑みだった。
「そうなのでしょうか? それならば良いのですが」
「はい。それにしてもギルヴィス王陛下、先程は一体何をなさっておいでだったのですか?」
「ああ、彼には壁ドンを教わろうとしていたのです。残念ながら、教わる前に走って行ってしまいましたが……」
少し肩を落としてそう言った王は、官吏が去っていった廊下の先を見つめていたため、ヴァーリア師団長が再び冷え切った表情を浮かべていたことには気づかなかった。
(しかし、どうしたものでしょう……)
そう内心で呟いた王は、小さく溜息をついた。ここまで来ると、壁ドンの正体が気になって仕方ない。本を読めば判ることだが、後でではなく今知りたいのだ。
そこでふと、王は隣に立つ男を見上げた。王の視線に一瞬で元通りの微笑みを繕った師団長が、どうなさいましたか、と言う。それを見た王は、何も尋ねる相手はあの官吏しかいない訳ではないのだ、と思い至った。
「ヴァーリア、ひとつ聞いてもよろしいですか?」
「なんなりと」
「壁ドン、と言うものをご存知ですか?」
突然の質問にやや面食らった師団長であったが、それを表に出すことなく、頷いて返す。
「はい。存じ上げております」
師団長は金の国の民にしては珍しく流行に興味がないため、例の本を直接読んだことはなかったが、壁ドンがどういうものかについては、部下たちから散々聞かされたので知っている。
肯定した師団長に、金の王はぱあっと顔を輝かせた。
「流石はヴァーリア! では、それを私にしてみせてください!」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
40 / 102